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- 世界のどこかに佇むアートに、とびっきりの愛を。 / anna magazineがお届けする「ロードトリップと、アートと。」
REPORT
2024.08.28
世界のどこかに佇むアートに、とびっきりの愛を。 / anna magazineがお届けする「ロードトリップと、アートと。」
Text&Edit / Kotone Tsuji (anna magazine / Mo-Green)
Illustration / Yui Horiuchi
「風変わりで、どこか愛おしい」。旅とビーチを愛するカルチャーマガジン『anna magazine』が、ロードトリップの途中で出会った海外に点在する愛すべきアートピースを紹介します。コンセプチュアルじゃなくたっていい、かっこよくなくたっていい。「どこかの誰か」の圧倒的な熱量によって生まれた不思議な作品たちは、今日も「世界の誰か」にとって特別なアートとして存在し続けている。アートピースを自分たちの足で集めてきた『anna magazine』と一緒に、自分だけの“FAVアート”を探す旅へ出かけよう。
世界に佇むナゾのアートピースたちに、とびっきりの愛を。
見知らぬ場所や人と出会う本当の面白さをたくさんの人に伝えるために、世界中を旅し続けてきた『anna magazine』。常にフラットな視点で小さな冒険へ出発し、いつだって独自の感性であらゆるモノコトの魅力を発見してきたからこそ出会うことができたアートピースたちは、今も自分だけの“お気に入り(=FAV)のアート”としてこころに刻まれているんだ。まだそんなアートに出会っていなくたって、世界中のどこかにはきっと自分だけのFAVアートが存在するはず。『anna magazine』と一緒に、こころ揺らすアートを探しにロードトリップへ、いざ出発!
『anna magazine』が紹介するFAVアートは3つ。どんなアートが登場するのかお楽しみに!
✔️Watts Towers
―「何か大きなことをやるべき」その想いを糧に、たったひとり、30年以上かけてつくった“私たちの街”
ロサンゼルスに佇む「Watts Towers」はセメント、タイル職人だったサイモン・ロディアがイタリアからロサンゼルスのワッツ地区に移住した後、30年以上もの時間をかけ、たったひとりで完成させた彫刻塔。住宅地の中に突如として現れる不思議な塔は、一番高い塔でなんと30メートル! 鉄とモルタルを材料に、すべて彼の手作業によって制作されているというのだから驚きだ。装飾にはガラスや陶器の破片、貝殻などさまざまな廃材が埋め込まれていて、ロサンゼルスのまぶしい太陽の光に照らされた塔はいつだってキラキラと輝いている。
少し離れた場所からでも圧巻の存在感を放つ「Watts Towers」は、街のシンボル的存在にもなっている
彼は「アーティストだから」という動機ではなく、漠然と「何か大きなことをやるべき」と、この塔の制作に取り組んだという。きっと当時の街の人から見たら、彼が何をしているか理解できなかったはず。それでも30年以上、自分の想いだけを信じて、黙々と塔をつくり上げた彼は紛れもない“真のアーティスト”だ。塔を間近で見てみると、無数の廃材が異なる配置で丁寧に埋め込まれていることがわかり、その小さなこだわりからも、たくさんの年月をかけてつくられたという時間の重み、そして「自分だけの塔を完成させたい」という真っ直ぐなサイモンの意志が伝わってくる。
彼は塔の集合体を“私たちの街”と呼んでいたそう。彼がこの街を去った後もずっと地域の人に愛され続ける「Watts Towers」は、今やこの街で暮らす人たちにとっての“私たちの街”の象徴となっているのだ。
「Watts Towers」は現在ロサンゼルスの国家歴史登録財などに指定され、重要なアートのひとつとして管理・保存されている
✔️David Adickes Sculpturworx
―巨大な石像ばかりつくるアーティストの石像保管場所
「David Adickes Sculpturworx」は、彫刻家、画家として活躍したアーティスト、デイビッド・アディケスのスタジオ。彼が制作する石像は、とにかく大きな石像ばかり。そんな石像たちの保管場所となっているこの場所は、「圧巻」という言葉だけでは片付けられない、なんともシュールな空間が広がっている。なぜなら、ここには完成された石像の中に混ざって、頭だけの石像や首から上がもげてしまっている未完成な石像もあるから……。作品を展示する場所ではなく、保管する場所として存在している空間そのものが、味わい深いシュールさを演出しているのだ。
巨大な石像を移動するためのクレーンも置かれ、よりシュールな空間に
石像を近くで見てみるとその芸の細かさに驚く。肌の凹凸やシワまで完全に再現されたそのクオリティには脱帽だ
石像たちを一つひとつ、近くで観察してみると、肌はスベスベに磨き上げられ、シワや髪の毛の質感まで丁寧に再現されていることがわかる。つくり手が愛情と時間をたっぷりかけた石像たちの完璧なコンディションと相反するように、ラフに置かれた石像たちの様子こそが、チャーミングなのだ。
完成された完璧な作品だけがアートなんじゃない。予想外の不完全さや作品制作のプロセスをひっくるめたアートの楽しみ方を感じられる「David Adickes Sculpturworx」は、一度訪れたら間違いなく誰かにシェアしたくなる場所のひとつ。普段フェンスの中には入ることができないけど、運が良ければ管理しているスタッフが中に通してくれたりするから、入れた人はとってもラッキー! 近くでその迫力を存分に楽しんでみて。
✔️Cadillac Ranch
―砂漠の真ん中に“ポツン”と。10台ものキャデラックが地面に突き刺さったモニュメント
テキサス州北部パンハンドル地方最大の都市アマリロの西にある「Cadillac Ranch」は、ルート66沿いの砂漠の中にポツンと現れる。遠くからだとなんだか判断できないモニュメントの正体は、なんと10台のキャデラック! カラフルに彩られた高級車のキャデラックがなぜか地面に等間隔に突き刺さっている……そんな自由な遊び心がいっぱいに詰まったアメリカらしいアートスポットだ。
ちなみに「Cadillac Ranch」は、ブルース・スプリングスティーンの曲名にもなっているほどアメリカでは有名で、ルート66沿いではポピュラーな観光スポットとしても知られている。
地面に突き刺さったキャデラック……大胆で、なんともアメリカらしいアートスポットだ
広大な敷地に“ポツンと”佇む様子も「Cadillac Ranch」の魅力のひとつ
さらに驚きなのが、訪れた人が自由に色を塗っているってこと。モニュメントの近くへ寄ってみると、さまざまな色のカラースプレーが地面に転がっているのだ。なんだろうと思ったその瞬間、観光客がそのスプレー缶をおもむろに手に取り、色付けをしはじめる。「え!? 大丈夫!?」と思ったら負け。この場所には管理人なんて存在しないから、毎日変化するナゾのアートに、自分の感性を加えてみるのも楽しみ方のひとつ。
ビビったら負け。この場所に訪れたら必ず“ここに来た”という足跡を残そう
訪れた人たちはみな思い思いにスプレーを吹きかける。“毎日変化するアート”ってなんかいいね
ちなみにこのモニュメントは1974年にこの土地の地主である大富豪がオーナーとなり、チップ・ロードらのアーティストグループによって建設されたそう。いつかはブルース・スプリングスティーンの「Cadillac Ranch」を流しながら本物のキャデラックでルート66を駆け抜け、自分のクルマを11台目のアートピースの一部に……なんて。アメリカンドリームを夢見るのも楽しい!
―anna’s FAV ART MAP
旅の途中で出会った数々のナゾのアートに予期せぬタイミングで感動したり、世界はまだまだ捨てたもんじゃない! なんて、勇気づけられたり。お行儀がいいアートピースだけがアートなんじゃない。誰かのこころが揺れ動いた作品こそが、とびっきりの価値がある“唯一無二のアート”なんだ。長い年月をかけてひとりの人が作り上げた塔に、巨大な石像がたくさん置かれた石像保管場所。そしてキャデラックが地面に突き刺さったナゾのモニュメントまで。
広い広い世界には、まだ見ぬアートピースがたくさん。そんなアートスポットを旅するための「anna’s FAV ART MAP」、あなたのアートの扉を開くのはどんな“FAVアート”?
DOORS
anna magazine
ファッションからライフスタイルまで、ビーチを愛する女の子のためのライフスタイルマガジン。ビーチは大好きだけど、街の喧騒も嫌いじゃない。仲間と過ごす時間と同じくらい、ひとりで過ごす休日も好き。フラットな視点を持っているから、いろんな場所のいろんなものに触れて、いろんな人の考え方や生き方をリスペクトできる。旅で経験することのすべてが、新しい自分を作ってくれることを知っている。だから『anna magazine』はいつでも旅をしています。見知らぬ場所へ行く本当の面白さを、驚きや感動を求めるたくさんの人たちに伝えるために。
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