• ARTICLES
  • アーティスト もみじ真魚 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.29

SERIES

2024.07.17

アーティスト もみじ真魚 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.29

Photo / Kaoru Mochida
Edit / Eisuke Onda

独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動する、とに〜さんが、作家のアイデンティティに15問の質問で迫るシリーズ。今回は、見ているだけでお腹が空いてくる“飯テロ”なたべものアーティストのもみじ真魚さんの背景に迫ります。

SERIES

アーティスト にいみひろき 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.28 はこちら!

アーティスト にいみひろき 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.28 はこちら!

SERIES

アーティスト にいみひろき 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.28

  • #アートテラー・とに〜 #連載

今回の作家:もみじ真魚

たべものアーティスト。武蔵野美術大学油絵学科卒。「光」と「色彩」に特化した飯テロ表現を得意とする。2019年からSNSにて毎日イラスト更新をスタート(2024年5月時点で1800点超)。2020年秋に初個展「美味しい365日展」を開催し大盛況を得る。続けて香港、米ロサンゼルス、ニューヨークにて海外個展を展開。日本を始め、北米、アジア圏など海外でもファンを多数持つ。代表作に画集『飯テロ!』『甘テロ!』(PARCO出版)。アニメ『ダンジョン飯』フードカラーデザインなど。

ARTWORK01_maomomiji-min
#1895 Big wave & Mt,Fuji in Icebar /21.5×26cm

ARTWORK02_maomomiji-min
#1896 Japnese Fireworks in Icebar/21.5×26cm

ARTWORK03_maomomiji-min
#1898 Ramen bath time/15×21cm

 

tony_pic

もみじさんに質問です。(とに〜)

今回の作家は、もみじ真魚さん。“飯テロ”なイラストを毎日Instagramで更新し続ける話題のイラストレーターです。職業柄、「巧い!」と思わされる食べものの絵画は何度となく目にしてきていますが、心の底から「旨そう!」と思わされたのは、もみじ真魚さんの食べものの絵が初めてかも。ただリアルなだけでなく、食べものの匂いや温度、音といったものが感じられ、五感に訴えかけてくるのです。あー、思い出しただけでも、お腹が空いてきてしまいました。

そんな中で考えていたので、気づけば、質問は必然的に食べものに関するものばかり。『作家のアイデンティティ』史上もっとも“飯テロ”な回です。深夜あるいはダイエット中には読まれないことをオススメします!

Q01. 作家を目指したきっかけは?

中学生の時にジブリの『もののけ姫』を観たのが大きな衝撃でした。元々ジブリ映画で育ってきた幼少期だったのですが、この映画が一番のキッカケとなって、絵を描く仕事がしたい!と思うようになりました。

 

Q02. 青春時代、一番影響を受けたものは何ですか?

前述の通り、ジブリ映画の影響はとても大きかったです。それ以外にもドラクエやFFといったRPGのゲームもとても好きで、設定資料集や画集をずっと読み込んでいました。世界観や小物を描いたり考えたりすることが、その頃から好きだったのだと思います。

もみじさんが中学生時代に購入したという、映画『もののけ姫』のイメージボード、美術ボードが載ったビジュアルブック『THE ART OF もののけ姫』。「最初は映画の背景に心掴まれて、それから厨二心くすぐるアシタカのかっこよさに惹かれていきました。今思うと、ジブリって食べもののシーンもすごいので、それが先天的に植え付けられたのかもしれません。この本を買ってから、スケッチブックを購入してスケッチするようになりました。美術大学に入るまでに150冊は描き溜めたかな」

Q03. 「飯テロ」な食べものの絵を描くようになったきっかけは何ですか?

20代の頃に自費出版で旅行記を書いたことがあって、その際に食べものの描写を褒めてもらったことが大きなきっかけでした。自覚がなかったのですが、そもそも食べものフィーチャーのページが主になってました(笑)。

もみじさんのクロスバイク。「大学では油絵を専攻してたんですけど、なぜか漫画家を目指すようになって。運良く編集者の目にも留まり、在学中はデジタルで漫画を制作する日々でした。でも漫画も上手くいかなくて、自分探しのために自転車で北海道まで行ってみようと。まあ、当時読んでいた漫画『ハチミツとクローバー』の影響です(笑)。それをエッセイにしたんですけど、無意識に食べものばかり描いてたんです」

Q04. 食べものがただリアルに描かれているのではなく、どの食べものももれなく美味しそうに感じられます。その秘密を教えて頂きたいです。

そう言っていただけて光栄です。自分の中では実物が最強だと思っているので(香りや温度まであるし、何より食べられる)、ビジュアル面でそこを補填しないといけないというプレッシャーを自分にかけているところはあります。

「食べものは昔から好きで、描くのも楽しい。一番描いてて楽しいのは目玉焼きです。自分の好物でもあります、黄身に光を入れているときは毎回気持ちが高まります」

Q05. 食べものばかりについ目が向いてしまいますが、食器や容器の質感の再現も同じく素晴らしいです。食器や容器を描く上でのこだわりはありますか?

ありがとうございます。器も魅力の一つなので、素材感や食材を引き立てるコントラストなどは意識するようにしています。

食器もコレクションしているというもみじさん。最近購入したお気に入りのラーメンどんぶりを披露

Q06. ぶっちゃけて、一番描くのが難しい食べものは何ですか?

スープに浸かった麺類です(笑)。麺類は均等に描くのが難しいですし、スープに沈むと色のグラデーションがかかって、とても描くのが複雑になります。でも、ラーメン大好きなので、毎回、愛で乗り越えています。

 

Q07. これまでに嫉妬した食べものの絵はありますか?

嫉妬という感覚ではないのですが、やはり宮﨑駿監督の描く料理描写は私の原点でもあるし、ずっと憧れの存在ですね。『ハウルの動く城』に出てくるベーコンエッグを見て、今まで興味がなかった目玉焼きが好物になってしまうくらいのインパクトがありました。もし私も人の嗜好まで変えてしまうものが描けたら作家冥利に尽きますね。

「漫画家時代、アシスタントが描いた米やとんかつの質感にダメ出しをして驚かれたことがあるんです。『そんなこと誰も気にしませんよ!』って。でも、幼い頃から食に対してもこだわりが強かったので、僕はそこが譲れなかったんです。ようは自分の中のこだわりは普通じゃなかった(笑)」

Q08. アニメ『ダンジョン飯』のフードデザインも担当されていらっしゃいますよね。架空の食べものを描く上で、心がけていることはありますか?

『ダンジョン飯』は魔物を食べるという、みんなが忌避するような、まるでゲテモノを食べるようなニュアンスが作品の面白味の一つなのですが、制作の際は監督と相談して「未知だけど美味しそう、食べたら美味しい!!」という表現を目指すようにしました。未知のものでも「美味しく描く」というのは私のこだわりです。

アニメ『ダンジョン飯』のDVDボックス

Q09. もしも作家になってなかったら、今何になっていたと思いますか?

間違いなく料理人ですね(笑)。どんな職業であれ、きっと美味しいものに真正面から向き合っていたと思います。

 

Q10. アイコンがたぬきなのはなぜですか?

たぬきそばが好きだからです(笑)。動物のたぬき自体も好きで、ちょっと抜けているところが自分にそっくりだなと思ってお気に入りです。

デスクを見守るのはもみじさんが制作したたぬきのぬいぐるみ

Q11. アトリエの一番のこだわり or 自慢の作業道具など

壁中にたくさんのメモやアイデア、考え事を羅列しているところです。いつも考え事をしているような性格なので、仕事場の壁は私にとって思考領域を拡大できる場でもあります。

壁には作品の資料やラフ、メモが書かれた付箋が貼られている

Q12. ご自身で料理はされますか? やはり見栄えにはこだわりますか?

自分で料理します。ただ、自分で料理する時は偏った料理を作りがちです、薬味マシマシとか、一つの具材マシマシとか、なので映えではないと思います。欲望のまま食べています、だって自宅だもの。

 

Q13. ご職業病だなぁと思うことは?

外食した際に、食べものの写真を撮ってしまうところですね。食べ始めてから撮り忘れたことに気が付くことも多いですけど(笑)。

写真上は最近食べたスイカの写真で溢れているもみじさんのスマホ。写真下は制作途中の油絵作品。「昨年、ニューヨークで個展をしたのをきっかけに大きな絵画の魅力を再確認。油絵にも挑戦するようになりました」

Q14. 頑張った自分へのご褒美として食べるものは何ですか?

ご褒美とは少しずれるのですが「ちょっと今キツイな、辛いな」というときは目玉焼きを乗せたゴハンを食べます。こんな低コスパで手軽に食べれて最高に美味しい食事があるなら、健康だったら今後も大丈夫だな、と思えるんですよね。

 

Q15. 自分を食べものに例えると何ですか?

ここは敢えて強気に「ワイン」と言わせてください。これから時間をかけて熟成されてどんどん美味しくなる予定です。もし、失敗してもワインビネガーとかにしてサラダに使っていただければ嬉しいです(笑)。

まず今率直に言って、モーレツに目玉焼きが食べたくなっています。こんな衝動に駆られたのは、この企画で後にも先にも今回だけでしょう(笑)。もみじさんの描く食べものが美味しそうに見えるのは、食に対しての並々ならぬこだわりがあればこそ。「絵の上手さ」と「食べものの美味そうさ」は決してイコールではないようです。やはり何よりも大事なのは、愛ですね愛。それを踏まえ改めて、愛を込めて描いたラーメンの絵を観てみたくなりました。
今でも十分に熟成されているのに、今後ますます美味しくなるご予定とのこと。数十年後に乾杯することを見据えて、1家に1つ、もみじさんの作品あるいは画集を手に入れておきたいところです。(とに~)

Information
今後の展示スケジュール一覧

「もみじ真魚 ウィンドウジャック」

作品パネルをウィンドウに展示いたします。
作品のご購入はアールグロリューまでお問い合わせください。
※展示パネルは作品の実寸サイズとは異なりますのでご了承ください。

■会期
74()723()

■場所
Artglorieux GALLERY OF TOKYO
(GINZA SIX1階交詢社通り側ウィンドウ)

 

「もみじ真魚個展 #DeliciousSummerVacation」

■会期
2024年8月1日(木)~8月7日(水) 10:00~20:30 
※最終日は18時まで

■場所
Artglorieux GALLERY OF TOKYO(GINZA SIX 5階)

■出展作品例
1892SunnySideCircle (1)
#1892 Sunny side circle/21×14cm

Artglorieux GALLERY OF TOKYOのHPはこちら

artist-identity_bnr

 

ARTIST

もみじ真魚

アーティスト

たべものアーティスト。武蔵野美術大学油絵学科卒。「光」と「色彩」に特化した飯テロ表現を得意とする。2019年からSNSにて毎日イラスト更新をスタート(2024年5月時点で1800点超)。2020年秋に初個展「美味しい365日展」を開催し大盛況を得る。続けて香港、米ロサンゼルス、ニューヨークにて海外個展を展開。日本を始め、北米、アジア圏など海外でもファンを多数持つ。代表作に画集『飯テロ!』『甘テロ!』(PARCO出版)。アニメ『ダンジョン飯』フードカラーデザインなど。

DOORS

アートテラー・とに~

アートテラー

1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。 芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。 美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。 アートブログ https://ameblo.jp/artony/ 《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館) 

新着記事 New articles

more

アートを楽しむ視点を増やす。
記事・イベント情報をお届け!

友だち追加