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- 高橋愛を成長させたアート体験「モノクロの作品が自分に必要なことを自覚させてくれた」 / 連載「わたしが手にしたはじめてのアート」Vol.30
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2024.12.11
高橋愛を成長させたアート体験「モノクロの作品が自分に必要なことを自覚させてくれた」 / 連載「わたしが手にしたはじめてのアート」Vol.30
Photo / Madoka Akiyama
Edit / Miki Osanai & Quishin
自分らしい生き方を見いだし日々を楽しむ人は、どのようにアートと出会い、暮らしに取り入れているのでしょうか? 連載シリーズ「わたしが手にしたはじめてのアート」では、自分らしいライフスタイルを持つ方に、はじめて手に入れたアート作品やお気に入りのアートをご紹介いただきます。
お話を聞いたのは、「モーニング娘。」のOGメンバーである高橋愛さん。現在はダンス&ボーカルユニット「GOKI-GENs」でのアイドル活動、アパレルブランドとのコラボプロデュース、モデル、俳優業などマルチに活躍しています。
ファッション、漫画、アートが好きな高橋さんは、アートを通じて「自分の心が無自覚に必要としている要素に気づかされた」と言います。それによって「自分がレベルアップした気持ち」と語る高橋さんに、アートとともに自身がどのように成長してきたのか、ふり返っていただきました。
佐藤友子 / 連載「わたしが手にしたはじめてのアート」Vol.29はこちら!
# はじめて手にしたアート
「制作の過程まで共有していただいたことで、届くまでワクワクする気持ちがどんどん膨らんでいきました」
一番最初にアートを購入したのは、2017年でした。はじめて手にしたアートは、旅行先のロサンゼルスで出会った、Moeko Maedaさんに制作していただいた作品です。
私はもともと、ロサンゼルスを拠点とするジュエリーブランド「PLUIE(プリュイ)」がすごく好きで、機会を見つけてはサロンやお店に伺っていたのですが、そこに飾ってあったMoekoさんの絵に一目惚れしたのが出会いのきっかけでした。
そこで、PLUIEのデザイナーである高橋裕也さんにMoekoさんを紹介していただき、「私と夫のあべさん(あべこうじ)をイメージした作品を描いてください!」とオーダーしたんです。
この作品の表面に見えるのは、塩の結晶です。下には何層も色が重ねられていて、色を重ねていく過程をMoekoさんが写真で送って共有してくれていました。ワクワクする気持ちがどんどん膨らんでいきましたし、私たちのことを想いながら制作してくれている様子が伝わり、とても感動してしまいました。
届く前から「絶対に部屋の真ん中に配置しよう」と決めていて、自宅では今も、リビングとダイニングをわける中央の柱に飾っています。
# アートに興味をもったきっかけ
「きっかけはPLUIEのアクセサリー。不揃いで自由な表現がアートのようだと感じたんです」
アートに興味をもち始めたのも、PLUIEのアクセサリーがきっかけです。
PLUIEのアクセサリーは、全体的に左右非対称で不揃いな形が多く、その型にとらわれていない様が、まるでアートのようだと感じたんです。
均整のとれたものにも美しさを感じますが、不揃いだからこそ表現できる自由さに、私はより惹かれるんですよね。また、見る人によってさまざまな解釈ができ、そこに正解も間違いもないところにもアート性を感じますし、ユニークだなと思います。
高橋さんお気に入りのPLUIEのアクセサリー(写真提供:高橋愛)
そういったきっかけで徐々にアートの世界に関心をもつようになり、カフェなどの生活と身近な場所にあるアートを見る視点も、次第に変わっていきました。
カフェではまず、目線を手元のスマホからカフェの内装や壁へと移してみることから始めました。それから、作品の下にあるQRコードを読み込んで、作者や作品の背景を学んでみたり、店内をぐるりと見渡して、気になる作品があれば「これは買えるのだろうか」と調べたり。今でもよく、そういう過ごし方をしています。
身近なところから少しずつアートに意識を向けていって、自分でも購入するようになってからは、美術館や個展でも一層、鑑賞を楽しめるようになっていきましたね。
# 思い入れのあるアート
「自宅に迎える作品の共通点は、飾り方や暮らしの変化を想像して『ワクワクするもの』が多いです」
Moekoさんの作品もですが、私が自宅にお迎えするアートは、出会った瞬間に「どうやって飾ろう?」「この作品がうちにきたら暮らしがどう変わるんだろう?」とワクワクする作品が多いなと思います。
それはたとえば、アイドルグループ・アンジュルムの元リーダー、タケちゃん(竹内朱莉)の書道作品『笑』。タケちゃんは同じ事務所の後輩で、彼女が小学生のころから知っていますが、書道は有段者への指導ができる教授免許を持つほどの腕前なんです。
そんな彼女の作品を、2023年に開催された初の個展で購入しました。「笑」の文字をみた瞬間、「これは、お笑い芸人であるあべさんに贈りたい!」と思ったんです。私は大切な人たちに贈り物をするのが好きなのですが、このアートと一緒に、夫婦で日々「笑い」のある暮らしを一緒に楽しんでいます。
同じように、自分をワクワクさせてくれるようなパワーを、イラストレーターである妹のYui Takahashiの作品からも感じています。一番のお気に入りは、2024年の私の誕生日にプレゼントしてもらった『愛』というタイトルの作品です。
「愛ちゃんのことを想って描いた」というメッセージも嬉しかったそう
この作品からは、いつもとは違ったエネルギーやパワーを感じます。文字が金色なのも縁起が良さそうということで、ポジティブな運気が入ってくるように玄関に飾っているんです。
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# アートのもたらす価値
「自分が無自覚に求めている要素に、アートが気づかせてくれました」
アートが身近な存在になってからは、内面の部分でも変化がありました。
もともと白黒ハッキリさせたい性格で、物事を0か100のどちらかで判断しがちなところがありました。もちろん、それによって助けられてきたことも多いけれど、ひとつの正解に縛られてしまうことから、逃げ道を失って苦しむことも。「モーニング娘。」時代もリーダーとしての責任感や正義感から視野が狭くなり、それによって悩んだ時期もありましたね。
変化が訪れたきっかけは、少年漫画を読んでいたときに、ひとつの疑問を持ったことから。「善と悪」「天使と悪魔」のような対比で描かれている物語を追うなかで、ふと、「絶対的な善悪ってあるのだろうか?」「正義はひとつしかないのだろうか?」のようなことを思ったんです。
そんなことを考えていたときに出会ったのが、DAICHI MIURAさんの『Yin and Yang』という作品。ひとつのキャンバスの中に白と黒が混ざり合って幾何学的な形を成しているのですが、それを見たとき何か、作品が動いているように感じたんです。白と黒がうごめいている感じに衝撃を受け、一目見て購入を決めました。
のちのちになってから、私自身が「白の部分と黒の部分の両面があって物事は成り立つし、どっちが良い・悪いと縛られなくていい」という視点を必要としていたから、衝撃を受けたし、惹かれたのかもしれないと思いました。無意識に、「曖昧さを認める考え方」や「複数の視点を持つこと」を求めていたのではないかなと。
だから私にとってアートは、自分でも気がづいていない私自身に必要な要素に気づかせてくれて、レベルアップさせてくれる存在なんだと思います。漫画やアートを通じて、「白か黒か」「0か100か」ではなく、その間にある可能性を楽しめるようになりました。
# 「自分の好き」を育むためのマインドセット
「“できない理由”でなく“できる方法”を探すことで、好きなものを手放さず育んでいく自分でいられる」
「こちらの心臓の絵の作品はあべさんが購入しました」と、夫婦でアートを楽しんでいる様子も覗かせた高橋さん
内面の変化で言えば、思考の変化も、今の自分の仕事にいい影響を与えているように思います。もともと何を始めるにも不安が先立ってしまう性格で、自分がやりたいと望んでいることに対してチャンスがめぐってきても、「失敗したらどうしよう……」と考えて落ち込んでしまっていたんです。
変わったきっかけは、あべさんの一言。
あるとき、「はじめる前に不安になっていても、いつも『楽しかった!』って帰ってくるんだから、最初から楽しめばよかったじゃん」と言われて。たしかに人ってつい、自分を守るために「やらない理由」や「できない言い訳」を探してしまうし、私自身もそうだけれど、あべさんの言葉をきっかけにネガティブな思考の連鎖がふっと途切れたんですよね。
そこから、ただ不安な感情に引っ張られるのではなく、「どうしたらやりたいことをできるか」「叶えるためには何が必要か」という思考に切り替えて過ごすようにしました。アートを購入するときも同じで、それなりの金額がする作品を購入するために、クレジットカードの限度額を上げて購入したことも(笑)。
そうやって思考を前に進めていくことで、ダンスユニットでの活動や、ファッションブランドのディレクター、カフェのプロデュースなど、自分の好きなことを手放すことなく活動できている今があると思います。
たった一度きりの人生だからこそ、アートに触れることも含め、やりたいことは思いっきり楽しんだもの勝ち。「好きなものに囲まれて過ごす自分」になるために、ポジティブ思考でいることが本当に大切なことだなと、つくづく思います。
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