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井上七海
アーティスト
「線を引く」という単一行為の反復によって「何かを描く」というイメージの制約から絵画を解放させることを試みる井上は、インクとペン、糸、ビーズと素材を替え、そのつど異なる「線」の現れと、一つの意味に決定されない絵画のあり方を探究してきた。丸ペンとインクで線を引き重ねる〈SUHU〉、糸がトレーシングペーパーの表と裏を貫きながら描かれる〈表と裏のためのドローイング〉、ビーズを連ねて支持体の側面まで線を延ばす〈Rim〉。素材は替わっても行為はひとつであり、井上が試みているのは、何かを一つに決定することではなく、複数の力が同等に存在する状態を画面に保ちつづけることだ。表のために裏が捨てられることはなく、線のために点が均されることもない。いくつもの視点が同時に正しくありうる。描かれているのは対象ではなく、そのすべてを等しく肯定するという態度そのものである。
