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2022.11.25

アーティスト サガキケイタ 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.9

Photo / Gyo Terauchi

独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動する、とに〜さんが、作家のアイデンティティに15問の質問で迫るシリーズ。今回は、遠くから観ても、近くから観ても驚きを与えてくれるアーティストのサガキケイタさん。ペンを止めずにキャラクターを描き続けるサガキさんの背景に迫ります。

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  • #アートテラー・とに〜 #連載

今回の作家:サガキケイタ


有名な古典絵画のイメージを、製図ペンを用いて、おびただしい数のキャラクターや、即興的なドローイングを描き込んでいくことによって再構築する。離れて観た時(全体像)と、近づいて観た時(細部)とのギャップを生み出すことで、既成の価値観や美意識を転換させるような作品を制作している。

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タイトル: Mother Structure’s Son [#5]
サイズ: H.195.8cm×W.86.1cm
制作年: 2022
素材: ペン、クラシコファブリアーノ紙、パネル

 

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サガキケイタさんに質問です。(とに〜)

離れて観ると、古今東西の名画や著名人の肖像写真など一度は目にしたことのある図像ながら、近づいてよくよく観てみると、それらは実は無数の愛らしい小さなキャラクターが寄せ集まって構成されていることに気づかされる。そんな唯一無二の作品を生み出し続けるサガキさん。これまで実際にお会いする機会がなかったので、遠目から「とてつもない画家だなぁ。目が疲れないのかなぁ。」と思っていましたが、今回アンケートにお答え頂けるということで、制作スタイルやプライベートにググっと迫ってみたいと思います。さてさて、サガキさん自身は一体どんな要素で構成されているのでしょうか?!

 

「神奈川沖浪裏\Brand New Wave」
作品詳細はこちら

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Q.01 作家を目指したきっかけは?
大学の時、仲間と初めて催したグループ展で展示した絵の評判がわりと良く、初めて認められた気がした。その時の高揚感とドキドキをずっと感じていたいから作家になったのだと思う。

 

Q.02 なんでアーティスト名はカタカナなのですか?
漢字の表意性を排除したかったから。名前に余計な情報を持たせたくなかった。
それと、字面や語感がカクカクしていて、硬質的で、なんかカッコいいと思った。

 

Q.03 制作中や制作後にリフレッシュするためにしていることはありますか?
・一歳の娘と遊ぶ。
・豆から挽いて淹れたコーヒーを飲む。
・テレビゲーム(マリオとかゼルダみたいな1人でコツコツ進めるゲームが好き)。
・寝る。

 

Q.04 (名画を無数のキャラクターで埋め尽くす)サガキさんのスタイルの作品第一号のモチーフは何の作品でしたか?
レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」
Q5.の回答にもつながるけど、世界一有名な絵画作品だと思ったから、この絵をモチーフに選んだ。

 

Q.05 名画をモチーフにする上でもっとも心がけていることは何ですか?
多くの人が知っているような有名な絵であるということ。有名であればあるほど、離れて観た時と近づいて観た時のギャップが大きくなる。その全体と部分のギャップをより大きくしていくのが、制作の狙いでもある。
また、ほとんどの作品は、モチーフの名画と同じサイズで制作している。それは、オリジナルに対するリスペクトでもあり、オリジナルに出来るだけ近づけることで、やはり視点の変化による落差をより生むためでもある。

 

Q.06 モチーフにしてみて改めてそのスゴさに気付かされた名画はありましたか?
近年でモチーフにした名面だと、ピーテル・ブリューゲルの「バベルの塔」
約450年も前に描かれた絵なのだが、発想がぶっ飛んでいるし、細部の人物描写や、重機械、内部構造まで、とにかくリアルで、繊密に描かれていて、まさに「神は細部に宿る」を体現した作品だと思った。

あれほど繊密な絵を描いているサガキさんがおっしゃられるなら、それはよっぽどの繊密なのでしょうね!(とに〜)

 

Q.07 自身の絵によく登場するお気に入りのキャラクターはありますか?
キャラクターは、その場で思いついたものを直感でどんどん描いていくのだが、動物だと、猫とか象とかを描いていることが多いような気がする。あと、赤ちゃんとか、骸骨とか妊婦とか性器とか、生と死が象徴されているキャラクターもよく描いている。

 

Q.08 アトリエの一番のこだわり or 自慢の作業道具など
アトリエには出来るだけものを置かない。絵がごちゃごちゃしているので、周りの空間はごちゃごちゃさせたくない。画材のステッドラーの製図ペンは、もう10年以上の付き合いなので、体の一部みたいな感覚になっている。

Q.09 職業病だなぁと思うことは?
作家あるあるかもしれないが、美術館とかギャラリーとかに行くと作品よりも先に、展示の仕方や支持体、額の仕様などに目が行ってしまう。

 

Q.10 青春時代、一番影響を受けたものは何ですか?
音楽(主に日本のロック)。10代の頃好きだったのは、↑THE HIGH-LOWS↓(勿論、THE BLUE HEARTSも)や、くるり、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、THE MAD CAPSULE MARKETS など。あと、世代(90’s末期)的に、Hi-STANDARDやGOING STEADYなど、インディーズレーベルも流行っていて、よく聴いていた。20代の頃はよくライブやフェスにも足を運んでいた。

ほぼ同世代なので、どれも懐かしいです。当時、ハイスタやゴイステに憧れてバンド活動していた高校生はどの学校にも1組はいた気がします。(とに〜)

 

Q.11 子供の頃に一番好きだったテレビ番組は何ですか?
やはり当時は、ダウンタウンがキレキレで、ずば抜けていたので、「ごっつええ感じ」や「ガキの使い」は毎週チェックしていた(DVDも買い集めていた)。DVDだと「VISUALBUM」も衝撃的だった。でも一番好きだったのはラジオの「放送室」で、MDに録音して、繰り返し聴いていた。CDも全巻揃えて、今でもよく制作BGMとして流している。

 

Q.12 一番好きな美術館はどこですか?
国内だと、千葉県佐倉市にあるDIC川村記念美術館。所蔵コレクション(特に50~60’sのアメリカ美術)や、企画展示が好みであるのと、広々した庭園も良い。あと、行くのにちょっとした小旅行を味わえるのもワクワクする。
海外で行った中だと、アメリカのシカゴ美術館。こちらも所蔵作品及び周辺環境含めて、マイベストだった。

奇遇ですね!実は僕の一番好きな美術館も、DIC川村記念美術館です。千葉県出身なもので。ロスコルームが好きで年に数回は足を運んでいます。ロスコの作品をサガキさんがモチーフにしたらどうなるのでしょう?(とに〜)

 

Q.13 同じ時代に生まれてたら、こいつとは絶対に仲良くなれそうor絶対に友達になれないだろうなぁと思う芸術家はいますか?
仲良くなれそうというか、仲良くなりたいのはフィンセント・ファン・ゴッホ。
お互いの失恋話をぐちぐち言いながら「くよくよするなよ、まあ、お互いがんばろうよ」と励まし合いたい。
友達になれなさそうなのはアンディ・ウォーホル。理由はパリピっぽいから。作品は好きです。

 

Q.14 「自分の生活にこのお店は絶対に必要!」というチェーン店を教えてください。
特定の店舗はないけど、大型ホームセンター(特にDIYコーナー)。
工具や資材なんかを時間も忘れて物色してしまう。これも職業病かもしれない。

 

Q.15 もしも作家になってなかったら、今何になっていたと思いますか?
大学卒業後7年間、作家をしながら、高校の美術教師もフルタイムでしていたので、専業画家にならなかったら、今もずっと教員を続けているのかなと考えた。けれど、そもそも画家をやっていたからこそ、教師もなんとか続けられていたので、作家をやっていなかったらそもそも教師にもなっていなかったかも。ということで、作家以外で何になっていたかは想像つきません。あ、もしなれるなら、噺家になってみたいです。落語大好きだし、しゃべり一本を生業にしているのがカッコいいから。

さすがはサガキさん。作風同様に、アンケート用紙の回答欄をびっしりと埋め尽くすようにお答えいただきました。ご協力ありがとうございます!
ダウンタウンさんに大きな影響を受けて『VISUALBUM』や『放送室』も抑えていたこと、ゴッホと失恋トークで盛り上がれそうなこと、パリピなウォーホルとは馬が合わなさそうなこと。どの回答も興味深かったですが、個人的には落語家になってみたいとの発言がもっとも印象に残りました。これほどまでに精緻な作品を制作しているサガキさんなら、きっと一字一句スキのない落語を一席披露してくれそうです。
では、最後に。「サガキケイタさんの作品を鑑賞している時」とかけまして、「常夏の島」と解く。その心は、「いつまで経ってもアキ(飽き・秋)がこないでしょう」。おあとがよろしいようで。(とに〜)

 

information
SIGNS OF A NEW CULTURE vol.10

■会期
2023年1月11日(水)〜1月17日(火)
※最終日は20時閉場
■会場
大丸札幌店1階 イベントスペース
〒060-0005 北海道札幌市中央区北5条西4丁目7
■入場料
無料

詳しくはこちら

作家のアイデンティティ_バナー

ARTIST

サガキケイタ

アーティスト

1984年石川県生まれ。有名な古典絵画のイメージを、製図ペンを用いて、おびただしい数のキャラクターや、即興的なドローイングを描き込んでいくことによって再構築する。離れて観た時(全体像)と、近づいて観た時(細部)とのギャップを生み出すことで、既成の価値観や美意識を転換させるような作品を制作している。主な個展に「Atom Heart Mary」(2022、三越コンテンポラリーギャラリー、東京)、「Hystorical Portraits」(2020、MICHEKO GALERIE、ドイツ)、「My Girl」(2019、多納芸術 Donna Art、台湾)など。また、国内外のアートフェアにも精力的に参加している。

DOORS

アートテラー・とに~

アートテラー

1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。 芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。 美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。 アートブログ https://ameblo.jp/artony/ 《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館) 

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