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- 部屋に、とっておきのアートピースを――東京の名店主に聞く、アートブック、日用品、カセットテープ
2024.09.25
部屋に、とっておきのアートピースを――東京の名店主に聞く、アートブック、日用品、カセットテープ
Edit / Eisuke Onda
アートがある暮らしに、さらに刺激を与えてくれるアイテム。
あるいはアートを取り入れたい、そんなことを考えている人の最初の一歩となるアイテム。
私たちの日常に彩りを与えてくれるアートピースを求めて、さまざまなジャンルの名店を訪ねていく。
今回は、東京に店を構える書店〈ブックギャラリー ポポタム〉、コーヒーと日用品のお店〈DAILY SUPPLY SSS〉、カセットテープの品揃えが抜群の〈waltz〉から、それぞれオススメの3アイテムを教えてもらった。
#1〈ブックギャラリー ポポタム〉店主・大林えり子さんが選ぶ
イチオシの韓国アートブック
パクヘミ『Dear Birthday』
サイズ:210 x 280mm、フルカラー72ページ、版元:YOURMIND(2023)
水彩画家によるグラフィックノベル。ほとんどセリフがないので韓国語が読めない方も楽しめます。学生時代、ある誕生日を一緒に過ごした二人。成長しそれぞれの道を歩みながらも、特別なその日の記憶を忘れずにいる……水辺の表現が特に綺麗で、ひとコマひとコマが1枚の絵のように鑑賞できます。最後のページの封筒には小さなオマケが。
Robineggpie『The Heaven and the Sinner』
初版400部限定、オフセット印刷 20.0 × 28.5cm 100ページ、コデックス装
「天国と地獄」「罪と罰」「ピザかチキンか」。10年以上にわたり徹底したテーマで表現し続ける韓国のアーティスト、Robineggpieことシン・ドンチュル。 ピザの代金を間違った罪で、 ダンテの『神曲』のごとくピザとチキン(韓国デリバリーの究極の選択)の世界を旅することになった主人公。テーマは馬鹿馬鹿しくも、個展で発表した大作を再編集した装丁も美しい作品集。
オム・ユジョン『Night Waves』
ソフトカバー、サイズ210 x 260mm、フルカラー108ページ(2023)
自らが訪れた自然の風景にインスピレーションを得て創作活動を続ける画家。この本は、夏の済州(チェジュ)島の夜、冬のソウルを流れる漢江(ハンガン)の植物、そして人物のさまざまなポーズを組み合わせて編集した画集。視覚的な体験を絵画とドローイングの形で解きほぐし、ダイナミックな筆致と色使いで表現しています。
〈ブックギャラリー ポポタム〉
東京 目白・池袋にある本とギャラリーのお店。店主・大林さんいわく、Bird Pit『California Dream』もオススメ。
住所:東京都豊島区西池袋2-15-17
営業時間:金曜・月曜(15:00〜20:00)、土曜 ・日曜・祝日(14:00-19:00)
定休日:火曜・水曜・木曜、臨時休業あり
詳細は公式HP 、Instagram にて
現代アーティストとしても活動するLPACK.の作品をGAG 福井さんが鑑賞
#2〈DAILY SUPPLY SSS〉店主・LPACK.が選ぶ
アート好きに薦めたい日用品
ダチョウ羽ばたき
アートが好きなら自分が持っている作品を綺麗に保ちたい。生活の中で気になる額縁やオブジェ周りの埃をやさしく払うならこれ一択です。静電気が発生しないので埃で作品を傷つけることがありません。毎朝の床掃除の前にコーヒー片手にささっと優雅にどうぞ。高級車を撫でてる箒のミニサイズなので使っていてテンション上がります。
袋とじノート
メーカー/ 三洋紙業株式会社、デザイナー/ TUBUdesign
これはただ書けるだけのノートではない。ミシン目を開けば倍のサイズになるし、マスキングテープなどで片側を閉じればポケットにもなります。展覧会のメモをしつつ、チケットや、チラシ、ハンドアウトなどを綺麗に保管できるのが良い。バンクペーパー(銀行の帳簿用紙)は鉛筆との相性が良いので美術館内でもピッタリ。薄い透け感のある紙の中で、自然とエフェメラコレクションが育っていく。
Uranium glass
手前味噌ですが自分たちのマルチプルをご紹介。過去のプロジェクトで制作したカクテルグラスは、紫外線で濃い緑に発光するウランの特性を利用したもの。僕たちのドローイングをもとに岡山のガラス工房で作ってもらいました。今ではマイナスなイメージの多いウランですが、昔は日の入り前のマジックアワーに大切な人と時間を楽しむための日用品として使われてきた。飾っても使ってもいける二刀流。
#3〈waltz〉店主・角田太郎が選ぶ
部屋でアートを眺めながらかけたいBGM
Ave Grave『Mathème』
アートギャラリーやアパレル・ショップから、ラジカセで流すBGMの選曲を依頼されることがよくある。その際の要望として、「主役はあくまでも展示物や商品なので、空間に色を付けない音楽」が求められる。正にこれ。ドイツはベルリンで活動する音楽家Sean Christopher Gallowayによるソロ・プロジェクトAve Grave。ピアノ、電子音、フィールドレコーディングの三要素を丁寧にコラージュし、幻想的サウンドスケープを描くネオ・クラシカル作品。長い年月を経てゆっくりと朽ちゆく歴史的建造物のように、厳かで、儚く、美しい音世界。何も妨げることなく唯々静かに鳴っている。とても知的で深い。
Shinji Wakasa『Dawn』
若狭真司さんは、CM、映画、ファッションショー等、多岐に渡る音楽制作で注目を集めるサウンドデザイナー。そんな人が作る音楽は、やはりアートと相性が良い。今作は今年6月に銀座のPOP-UPスペース「Sony Park Mini」で開催していたサウンド・インスタレーション「よあけのおと」と連携したもの。中国の古詩を原案に、アメリカの作家ユリ・シュルヴィッツが描いた絵本『Dawn』から着想を得たアンビエント作品。夜明けと共に変化する空の色や、早朝の澄んだ空気を表現する電子音のレイヤー。深夜から明け方にかけて微音で流しておくと、とても気持ち良い。
Sam Gendel and Sam Wilkes『The Doober』
日本でも大人気。サキソフォニストSam GendelとベーシストSam Wilkes。LAの地下ジャズ・シーンから飛躍し、今やジャンルを越えて様々なアーティストの客演に引っ張りだことなった二人のSamの共演作。サックスとベースによる二人だけの静かな会話。最初の一音が鳴った瞬間から特別な空気が醸成され、徐々に室内は心地良い緊張感に包まれる。多忙を極める二人が、来日公演の合間に日本でレコーディングした楽曲群。慎ましく、奥ゆかしいミニマルなジャズの中に「侘び・寂び」のような美意識が滲んでいる。
〈waltz〉
カセットテープ、レコード、VHS、ラジカセ、国内外の雑誌のバックナンバーや書籍を販売するショップ。
住所:東京都目黒区中目黒4-15-5
営業時間:13:00〜19:00
定休日:月曜
詳細は公式HP 、Instagram にて
DOORS
大林えり子
ブックギャラリーポポタム店長
2005年4月に書店とギャラリー併設の店舗「ブックギャラリーポポタム」を立ち上げる。一般流通にのらないインディブックや小物の販売と、ギャラリーでは絵画・映像・トーク・ライブなどジャンルにとらわれず展示やイベントを行う。2013年より出版活動を始め国内外のブックフェアに参加。2015年以降、韓国に行ったり来たりして共同出版や企画展示を行う。2025年移転予定。新物件探し中。 Illustration: Yu Yokoyama
DOORS
LPACK.
アーティスト
小田桐奨(1984年‐)と中嶋哲矢(1984年‐)によるユニット。2007年より活動開始。アート、デザイン、建築、民藝などの思考や技術を横断しながら、「コーヒーのある風景」をきっかけに、最小限の道具と、現地で入手できる素材や状況とを組み合わせるなどして、ミニマムな要素から、まちや行為の一部となるプロジェクトを展開している。主な活動に、定吉と金兵衛(さいたま国際芸術祭2023)や、日用品店DAILY SUPPLY SSS(東京)がある。 Photo: Koichi Tanoue
DOORS
角田太郎
waltz オーナー
1969年、東京都生まれ。CD/レコードショップ WAVE渋谷店、六本木店でバイヤーを経験後、2001年にアマゾン・ジャパンに入社。音楽、映像事業の立ち上げに参画。その後、書籍事業本部商品購買部長、ヘルス&ビューティー事業部長、新規開発事業部長などを歴任し、2015年3月に同社を退社。同年8月に東京・中目黒にカセットテープやレコードなどを販売するヴィンテージセレクトショップwaltzをオープン。また、さまざまな企業や店舗、イベント等のための選曲を行うほか、同ショップは、2017年12月、Gucciがブランドのインスピレーション源になった場所を紹介するプロジェクト「Gucci Places」に日本で初めて選出された。
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