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ESSAY

2023.09.01

フランス留学中のアイドル・和田彩花に聞く、パリとアートにまつわるエトセトラ / 連載「あの街のアートとカルチャー」Vol.8

最近、面白かった展示は? 注目のアーティストは? どんなカルチャーに触れて感動した? さまざまな場所で生活しながら、新しい文化を探す人たちに問いかける連載「あの街のアートとカルチャー」。

今回、教えてくれるのは連載「和田彩花のHow to become the DOORS」でもおなじみの和田彩花さん。現在、フランスで美術史を学ぶために留学中の和田さんに、1年以上の滞在で観てきたアートやカルチャーについてお聞きした。

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抽象画、どう世界に広まった? / 連載「和田彩花のHow to become the DOORS Season2 もっと知りたいアート!」Vol.1

  • #和田彩花 #連載

Q1
最近、パリで観たアートの展示や作品で面白かったものを教えて下さい。

オルセー美術館『Manet / Degas』(マネ/ドガ)

『Manet / Degas』の入り口

「2023年前半の展示で一番面白かったのは、オルセー美術館で開催されていた『Manet / Degas』です。パリに滞在していてもみることのできなかったマネ作品の数々はもちろん、作品にまつわる資料の展示、それからやっぱりマネとドガを比較できる空間がとても素晴らしかったです。特に、マネとドガが画面の中でどう女性を描き分けているかについて、画家自身が女性とどのような関係を築いたかの比較が興味深かったです」

エドゥアール・マネ《ピアノを弾くマネ夫人》1868年 提供:Artothek/アフロ

 

Q2
最近、パリで感動したオススメのカルチャーを教えて下さい。

親友に譲ってもらった棚

「親友に譲ってもらった棚を日本に持って帰るために、父とテレビ電話しながら棚の構造を観察しました(ちなみに分解して持って帰るつもりです)。シンプルな構造と作り方、どこにでも手に入る材料で作られているにもかかわらず、前から見たときに美しくあるために付け足されている、装飾的な箇所を発見しました。親友は、その辺の蚤の市で手に入れたと言っていたのですが、市民の生活にひっそりしっかり取り入れられるフランスの美的な感覚をダイレクトに感じられて感動しました」

 

『もののけ姫』

1997年公開のスタジオジブリ作品、宮﨑 駿 監督作品。© 1997 Studio Ghibli・ND

「フランスではNetflixでジブリを観ることができます。大人になってから改めて観る『もののけ姫』の奥深さに驚きました。そして大好きな映画の一つになりました。冒頭の自然に神が宿るという説明・設定のシーンで、物語の持つスケールの大きさに唸りました。物語の各所でも、それぞれの土地で信仰されるさまざまなもの / ことが登場人物の精神や思想にまで反映されているんですね。単なるキャラクターの性格というよりも、キャラクターの背景がずっしりしていて、キャラクター間の関係性や立ち回り方も複雑です。アニメを通して、思想に触れる経験は初めてのような気がします」

 

Q3
最近、注目しているアーティストを教えて下さい。

パープルーム

「今、新メンバーを募集しているようです。パープルームで活動するみなさんが乗り越えようとする美術界のさまざまな出来事について、美術についてメディアで発信する立場の私は、きちんと追って、知っておかなければいけないなという思いもあるし、今の日本の美術の流れを追うためには欠かせない存在なのだろうとも思っています」

パープルーム
美術家の梅津庸一が立ち上げた美術教育の私塾。活動形態は多岐にわたり、「パープルーム予備校」「パープルーム大学」「パープルームギャラリー」などがある。

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Q4
最近、パリでお気に入りの場所を教えて下さい。

Vide-greniers(ヴィッド・グルニエ)

「フリーマーケットやガレージセールと訳すことができるかな? ちょっとした家具に食器に洋服に本に様々なものが個人で出品されています。暖かい時期になると毎週末いたるところで開催されているんです。フランスに来てから、新しい商品を買う習慣がグッと減りました。おしゃれなお店が出品されているわけでも、ヴィンテージものを専門で扱うわけでもなく、普通に使わなくなったものを次の人に渡していく場です。服なら5から10ユーロくらい。流行りのない場所で、自分好みのものを発見し、自分流に使っていくのが大好きです」

 

オルセー美術館

「観光名所でもあり、パリといえばの王道な美術館ですが、私の一番好きな画家マネの作品や好きな時代の作品をたくさん所蔵しているので、自分にとっては特別な場所です。自分は気に入った場所に通い続けるタイプなので、一年有効のパスを買い、いつでも通える状況です。その日の気分に合わせて、観ていく順番を変えてみたり、その日の気分に合う画家を選んでその画家の作品中心に観ていくなど贅沢な楽しみ方をしています。オルセー美術館に来るたび幸せな気持ちでいっぱいになり、日本に帰るのが悲しくて涙が出そうになります。それくらい大好きな場所です」

 

セーヌ川沿い

「やっぱりパリで一番好きな場所は、セーヌ川沿いです。都市なのに、セーヌ川まで出たときに一気に空間が開けます(群馬出身なので広い空が好きです)。昔は、川で荷物を運んだだろうことを想像したり、石畳が多くなるセーヌ川沿いの馬車移動の乗り心地を想像したり、画家たちの目にポン・ヌフ(橋)がどう映ったかを川沿いに座って想像するのが大好きです。それから、なんかうまくいかないことが続いたとき、友達との待ち合わせから何やら話し込んじゃうとき、お酒飲むとき、寝転がりたくなったとき、いつでもセーヌ川が自分の記憶にあります。大好きな場所です」

 

Q5
パリでよく読むメディアを教えて下さい。

「日本でも特定のメディアを読む習慣があまりなかったので、フランスでもほとんどないかもしれません。あえて挙げるとすると、新聞とか。あとは、日本語でのコミュニティーサイトとかかな。完全に生きるための情報収集という側面が強いような(笑)」

 

Q6
今度、観ようとしているアートの展示はありますか?

フランソワーズ・ペトロヴィッチという作家の展示です。パリの展覧会情報を収集しているときに作品に出会って、気になっています。絵画では、さりげない人物の仕草を切り取るような主題に、鮮明な色合いなのに透明感があり、滲みなどもあるような表現を用いているそうです。目の前でこの作品を観てみたいです。実際観てみたら、全然異なる感想が出てきそうな予感もあります」

フランソワーズ・ペトロヴィッチ
1964年、パリ生まれのアーティスト。陶芸、ガラス、淡彩画、絵画、版画、映像など多様なメディアを用いて作品制作を行う。動物や花など生命体が宿る作品には、親密さ、生の断片、消失、二重性、移行、残虐性といったテーマが通底しており、曖昧な世界を果敢に侵略しながら、従来の境界を弄び、流動性を重んじ、いかなる解釈からも逃れていくギミックに溢れている。

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DOORS

和田彩花

アイドル

アイドル。群馬県出身。2019年6月アンジュルム・Hello! Projectを卒業。アイドル活動と平行し大学院で美術を学ぶ。特技は美術について話すこと。好きな画家:エドゥアール・マネ/作品:菫の花束をつけたベルト・モリゾ/好きな(得意な)分野は西洋近代絵画、現代美術、仏像。趣味は美術に触れること。2023年に東京とパリでオルタナティヴ・バンド「LOLOET」を結成。音楽活動のほか、プロデュース衣料品やグッズのプリントなど、様々な活動を並行して行う。
「LOLOET」
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