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INTERVIEW
2026.09.09
福岡発、国際アートフェアがなぜ成功したのか? ART FAIR ASIA FUKUOKA、10年の軌跡と挑戦
Edit / Eisuke Onda
近年盛り上がりを見せている福岡のアートシーン。空港からもほど近く街全体がアジアのゲートウェイとして機能し、官民一体となって文化政策を推進するこの街で、10年以上継続されているアートフェアがある。それが「ART FAIR ASIA FUKUOKA(AFAF)」だ。2015年にホテルの客室から始まったフェアは、いかにして成長したのか。
今回はAFAFを牽引してきた一般社団法人アートフェアアジア福岡から森田俊一郎氏(ギャラリーモリタ 代表)、阿部和宣氏(みぞえ画廊 専務取締役)、運営を手掛ける井上雅也氏(株式会社TODOROKI 代表取締役)に集まってもらい、誕生秘話から、行政を巻き込むことに成功したターニングポイント、そして今年10月に開催される11回目のフェアの見どころを語ってもらった。
福岡を動かしたアートの熱


写真左から森田俊一郎氏(ギャラリーモリタ 代表)、阿部和宣氏(みぞえ画廊 専務取締役)、井上雅也氏(株式会社TODOROKI 代表取締役)
――福岡でアートフェアを立ち上げたきっかけや経緯をお聞かせください。
森田:2015年、フェアの立ち上げに大きく力を貸してくれた故・西牟田一広さんから、西鉄のホテルグループが「何か面白い企画を探している」という話を聞いたことがきっかけでした。 1995年にスペイン・マドリッドで、アーティストの堀越千秋さんに連れられてARCOを見た経験が強く印象に残っていました。また、東京・飯田橋のアグネスホテルで開催されていたアートフェアも話題になっていたので、「ホテルを舞台にしたアートフェアを福岡でもできないか」と、西牟田さんと二人で企画をまとめました。
1月末にプレゼンテーションをして、その年の9月開催が決定。実は当時、私自身アートフェアに参加した経験すらなく、いきなり主催することになったんです。半年しかありませんでしたから、とにかくやるしかなかった。今だったら、間違いなく断りますね(笑)。
西牟田さんは2017年に34歳という若さで亡くなりましたが、福岡とアートをこよなく愛した彼の思いは、今もどこかで背負っているような気がします。そして、アートフェアを単に作品を売買する場ではなく、アートを文化の入り口として、人と人がつながる場所にしたい。その思いは、今も変わっていません。

ホテルアートフェアという形式で最初はスタートしたAFAF

2025年に開催された第10回の様子
――AFAFは昨年で10回を数えました。その間の変化はどのようにお感じですか?
阿部:私が初めて出展したのは2016年でした。まず驚いたのは、スタッフやボランティアの熱意です。日本はマーケットが小さいですし、福岡は貸しギャラリーも多い。だからアートフェアを立ち上げると聞いたときも、私は難しいのではないかと思っていました。でもその熱意が周りを巻き込んで、どんどん大きくなっていった。AFAFがきっかけになって、福岡の人がアートに関心を持つようになってきたと感じています。
井上:自分は最初ボランティアとして参加して、運営側としてAFAFに関わったのは2018年からです。ボランティアは福岡でアートを盛り上げたいという森田さんの思想的な部分に共鳴した人が手伝っていました。もちろん今もそうなんですが、2020年まではほとんどがボランティアで、すごくピュアな雰囲気で。
フェアの雰囲気は、コロナの流行でガラッと変わりました。コロナ前のアートマーケットは、好きな人が集まるマニアックな場所でしたが、コロナ中にアートを家で楽しむ習慣が広がり、情報も流れることで徐々にオープンになりました。コロナ後に関しては、そういう一般の人たちがアートフェアに来てくれるようになってます。

――フェアのターニングポイントとなった出来事はありますか?
井上:2021年に高島宗一郎福岡市長が来場されたことです。数時間滞在し全てのギャラリーを回り、作品も買ってくださいました。当時はコロナの影響もあり、市長の仕事もオンライン中心だったんですね。そんななか生活を豊かにするアートの価値を認識したり、地元のマーケットを通じて作家に貢献できることを感じていただけました。
それ以前から市長は福岡市美術館の改革などを行ってきましたが、以降アートによるまちづくりがより推進され、2022年には福岡市がAFAFの共催に加わる形になりました。予算も増え、ホテル以外の会場に念願だったブースを設営できるようになり、今では完全ブース型のフェアになっています。
森田:アートの価値を行政に伝えるのは、なかなか難しいことです。そういう意味でも、市の共催を得られたことは大きかったと思います。文化庁のレポートによると、AFAFは今ではアートフェア東京に次ぐ規模だそうです。ただ、私たちは決して規模の拡大を目指してきたわけではないんです。
九州を通じて世界と繋がりたい



――運営にあたって意識していることを教えてください。
井上:他のアートフェアだとスーツで対応しているところもあると思うのですが、AFAFはボランティアがたくさん関わっているのでユニフォームはTシャツをベースにしています。それによって敷居を低くして、コレクターだけではなく一般の人も楽しめるよう意識しています。ボランティアのホスピタリティが高いと来場者も楽しめて、出展ギャラリーの方々も楽しめる。予算は他のアートフェアに比べ少ないのですが、関わってくださる人のおかげで今の良い雰囲気が出来上がっています。
東京だと敷居の高いアートフェアでも成立しますが、福岡だと難しい。毎年1作品でも買ってくれる層が大切なんです。AFAFは恐らく日本で一番市民の方が買ってくれるアートフェアなんじゃないかなと思っています。ネームバリューや流行に関係なく、作品と向き合ってご購入いただいています。

――AFAFはフェアのタイトルに「アジア」が含まれていますね。その狙いは?
森田:福岡がアジアの中心であると確信しているからです。そして、アジアとアートの価値観を共有し、そこから世界とつながっていきたいと心から思っています。関西のギャラリーが「具体」の作家たちを紹介することで世界とつながったように、私たちにとっては「九州派(※)」も、福岡から世界とつながる大きな力の一つだと考えています。AFAFを通じて、現代のアートマーケットだけでなく、福岡の美術史も世界に伝えていきたい。実は僕たち3人の理事は福岡出身ではありません。でも、外から来たからこそ見える福岡のポテンシャルがあると思っています。
阿部:今年のAFAFには、海外から17軒のギャラリーが集結します。なかでも台湾からは過去最多となる8軒が参加し、韓国やフィリピンからも出展があります。福岡という地で、これほど身近にアジアのアートシーンの熱気に触れられることは、AFAFならではの魅力だと考えています。
――近年の新しい取り組みはありますか?
阿部:一昨年から「Masters」というブースを作っています。美術史はもちろんマーケットでも評価の高い作家の作品を各ギャラリーから集めた共同展示です。今年はシャガールが目玉です。なぜこのコーナーを作ったかというと、若い作家や現代アートも良いけど美術館で見るようなものはないかという声に応えたかったからです。ありがたいことに結果も出ていて、初日に数百万の作品が売れたりします。
井上:AFAFのいいところは意思決定が早くできるので、毎年のフィードバックをすぐ次の年に反映できます。このMastersもそういった体制の現れです。こういう誰でも知っている作家の作品があるとテレビ局も紹介しやすく、よく取り上げてもらっています。うまくいくことは続けて、違うなと思ったら変える。毎年試行錯誤を続けています。
※九州派……福岡県を中心に、1950年代後半から1960年代にかけて活発に活動した日本の前衛美術グループ。

阿部:それと昨年から台湾の玉山銀行(E.SUN BANK)の協賛で、「AFAF AWARD」という公募展を始めました。昨年の受賞者は台湾でも活動したり、登竜門として機能しています。さらに今年から、「AFAF AWARD PHOTO」という写真作品の部門も新設いたしました。
井上:フェアが大きくなって、福岡市がやっているようなアカデミックなアワードとは別に、アートフェアがアワードをやる必要性を感じ「AFAF AWARD」を立ち上げました。出展ギャラリーがアワードに出ている作家の作品を購入したり、自分たちの企画に呼んだりして、九州でアーティストを目指してる人たちの夢を叶える場所になって欲しいという想いで開催しています。
AFAFは専門学校が協賛して下さってるところがあるので、チケットを渡すと九州の美術系の高校生やその保護者も来てくれます。そこで実際に売買が行われていたり、作家がいる現場を見ると、保護者も「アーティストになりたい」と言っている自分の子供を応援しやすくなるみたいです。アート系の学校から志願者が増えたという嬉しい声も聞きました。
11回目、あらたな挑戦

――今年の見どころも教えてください。
井上:フェアの顔となるFeatureアーティストを、福岡とアジアからそれぞれ選びました。福岡からは2025年にVOCA賞最高賞受賞し、今年第4回福岡アートアワードにて、市長賞を受賞した宮本華子さんを、アジアからは世界最大級の芸術祭・ドクメンタ14・15への連続出展をしているクゥワイ・サムナンさんの作品が並びます。アカデミックで評価されている作家をマーケットでもしっかり見せていきたいと思っています。
また、様々な国内のギャラリーがアジアの作家を抱えていますが、他のフェアでは日本の作家をフィーチャーしがちです。そんな中でAFAFはアジアの作家を日本で紹介できる場所としても喜ばれているので、そこも見どころです。
阿部:gallery UG Fukuoka (大丸福岡天神店)をはじめ、広いブースをとっている出展者の展示も楽しみです。
井上:コマーシャルギャラリーの他にも、Fukuoka Wall Art Project 2026など行政のブースが複数出展します。祭りの文化が根付いている福岡は、イベントは一点集中みたいなところがあります。AFAFの会場内でもパフォーマンスやワークショップが行われるほか、同時期には、「FaN Week」が開催されます。福岡市美術館や福岡アジア美術館を中心に、市内の身近な場所でも展示やさまざまな催しが展開され、街を巡りながらアートに触れることができます。
美味しいものを楽しみながら、フェアだけでなく、福岡の街全体でアートを満喫できる機会です。ぜひ多くの方に足を運んでいただきたいと思っています。


――最後に今後の展望をお聞かせください。
阿部:AFAFはハイエンドなフェアを目指しているわけではありません。アートの裾野を広げることを考えていて、地方のアートフェアのモデルケースになりたいと考えてます。AFAFは民間で立ち上げ、行政の共催が入るようになりました。それに伴い、福岡の文化政策も加速しました。
最近はこうした気運が九州全体に広がりつつあります。私も理事として関わっているのですが、来年1月には市の主催によるアートフェアが宮崎で開催されます。街をアートで盛り上げていくこうした取り組みを、AFAF以外にももっと広げていきたいと思っています。

Information
「 ART FAIR ASIA FUKUOKA 2026 」
■会期
2026年10月2日(金)→10月4日(日)
VIP Preview *招待者・報道関係者向け
10月1日 (木) 13:00 ~19:00
Public Days
10月2日(金) 11:00~19:00
10月3日(土) 11:00~19:00
10月4日(日) 11:00~18:00
■会場
福岡国際センター
〒812-0021 福岡県福岡市博多区築港本町2-2
■入場料
前売券 ※9/10~10/1販売
2,500円(3日通し券)
1,500円(3日通し券・学生)
5,000円(グッズ付3日通し券)
当日券 ※10/2~10/4販売
3日通し券
3,000円(3日通し券)
2,000円(3日通し券・学生)
■主催
一般社団法人アートフェアアジア福岡
■共催
福岡市、一般財団法人カルチャー・ヴィジョン・ジャパン
■助成
令和8年度 文化庁 我が国アートのグローバル展開推進事業
アートフェアの詳細はこちら
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