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ESSAY

2023.07.21

デザイナー・阿部航太が“高知”に移住して出会ったアーティストたち / 連載「あの街のアートとカルチャー」Vol.7

Edit / Eisuke Onda
Design / ​​Hiroki IIMURA

最近、面白かった展示は? 注目のアーティストは? どんなカルチャーに触れて感動した? さまざまな場所で生活しながら、新しい文化を探す人たちに問いかける連載「あの街のアートとカルチャー」。

今回、教えてくれるのは高知県在住のデザイナーで文化人類学を専攻する阿部航太さん。昨年、東京からこの場所に移り住み、生活の中で出会ったアーティストやおすすめの場所について聞いてきた。

CROSSTALK

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文化人類学的視点で語る「部屋から、遠くへ」 ━前編━ 松村圭一郎×阿部航太 “街中のアートに触れ、その深層に思い馳せる”

  • #松村圭一郎 #阿部航太 #特集

Q1
最近、高知で観たアートの展示や作品で面白かったものを教えて下さい。

「合田佐和子展 帰る途もつもりもない」 (高知県立美術館)

「昨年末に観に行ったのですが、今でも思い出すくらい印象に残っています。作品とともに作家の生活が見えるような構成になっていて、なかでも作家がエジプト移住を敢行したときの展示が面白かったです。それが、創作の背景にあるエピソードというより、今で言うと“プロジェクト”のようで、生きることと創ることが同時にあるように見えました」

立ち止まることなく作風を変化させ、激しくも華やかな生涯を駆け抜けた美術家・合田佐和子(1940〜2016、高知出身)。そんな彼女の没後初にして、過去最大規模の回顧展が2022年11月03日(木)から、2023年01月15日(日)まで高知県立美術館で開催されていた。

 

Q2
最近、高知で感動したお笑い、音楽、小説、食、建築、デザイン、テレビなどなど。オススメのカルチャーを教えて下さい。

「ジョン万次郎漂流記」/井伏鱒二

角川文庫『ジョン万次郎漂流記・本日休診』より

「漂流、捕鯨船での活躍、アメリカでの暮らし、帰国と、とてもドラマチックな内容なのですが、それらがとても短く坦々とした文章で語られます。1、2行読み進めただけで、1年ほど時間がすぎて地球を半周していることもあり、そのスケール感にクラクラします。万次郎が当時出航したのが、今自分が住んでいるまちの港なので、太平洋を眺めるとジョン・マンがあそこにいたんだな、という気持ちになります」 

 

Q3
最近、高知で注目しているアーティストを教えて下さい。

KOSUGE 1-16

「どんどこ! 巨大紙相撲~北斎すみゆめ場所~」(2022)撮影:427FOTO

「もともと自分のパートナーは知り合いでしたが、私は高知に来て初めてお会いしました。KOSUGEの作品は、完成された“物体”ではなく、“運動”や“状態”のようなものが多く、そこには複数の人が関わることが前提となっているように見え、その在り方に興味を持っています。代表の土谷享さんにはお会いする機会がよくあるのですが、会話をすると“生きる力”みたいなものをもらえます」 

KOSUGE 1-16
2001年より、“もちつもたれつ”をテーマに活動を開始。分野横断的領域のプロジェクトやコラボレーション、ワークショップを得意とし、国内外でインスタレーションやアートプロジェクト等を発表している。近年のコラボレーションプロジェクトとして、Dungeons of KIITO (2022年,KIITO300,神戸), Playmakers Taipei ~PON-TAN Island~(2022年,TPAC,台北)など。

HPはこちら

 

Q4
最近、高知でお気に入りの場所を教えて下さい。

〈MOJOYAMA MISSISSIPPI〉

「本山町にある〈Cafe Missy Sippy〉の隣に、店を営むブルースマン、フジさんこと藤島晃一さんのアトリエがあります。その広い場所は紡績工場の跡地らしく、今はフジさんの絵画制作のアトリエ、ライブ/ イベントスペースとして使われています。まだ一度しか行ったことはないのですが、そこに置かれた膨大な量のソファーが、ライブや制作のときに発生した熱量を今も蓄えているように見えたのを覚えています」

〈Cafe Missy Sippy〉
藤島晃一さんが営むネルドリップ珈琲とケーキのお店。定期的にライブイベントも開催。
営業時間:11:30〜20:00 *水木定休日
住所:高知県長岡郡本山町本山1102-1 

Cafe Missy SippyのInstagramはこちら
藤島さんのInstagramはこちら

 

〈太陽の眼〉

「四万十町のなにもない道沿いに突如現れる赤い外装の建物の中には、サイケデリックな古着や雑貨、レコードが並んでいます。店主のお2人がそれぞれにノイズミュージックと舞踏をやってらして、ときどき開催されるイベントもそういった世界観のものが多い気がします。僕はそのあたりは詳しくないのでほとんどわからないのですが、自分の知らない世界があるんだなと感じられる場所で、毎回行くとワクワクします」

〈太陽の眼〉
“服,雑貨,本,レコード,カレー,コーヒー&more!”なお店。ライブやイベントも行っており今年の8月3日(木)には都築響一さんのトークショーも開催。
営業時間:12:00〜18:00 *不定休
住所:高知県四万十町影野422-1

Instagramはこちら

 

Q5
この夏、高知でやりたいことは?

夏野菜を食べる

「高知に越してきて一番驚いたのが野菜の美味しさです。そのなかでも、茄子、ピーマン、ししとう、オクラといった夏野菜は特に美味しい。仕事場や近所の人からたくさんお裾分けをいただけますし、今年はパートナーが市民農園で野菜をつくっているので、それを食べるのを楽しみにしています」

 

Q6
今度、観ようとしているアートの展示はありますか?

「筒 | tsu-tsu 地上」(十和田市現代美術館サテライト会場 space)

「“ドキュメンタリー・アクティング”という独自の手法を用いて活動する、筒|tsu-tsuさんの滞在制作による展覧会です。十和田のまちの人たちと関わりながら、「個」からその地の営みを読み解き、新たな関係をつむぐ試みとのこと。自分がデザインを担当しているということもありますが、「個」から「まち」が立ち上がるという工程にとても興味を持っていて、その過程の一部でも覗きに行きたいと思っています」

「筒 | tsu-tsu 地上」
会期:2023年7月1日(土) - 9月3日(日) *月曜休み
会場:space(十和田市現代美術館サテライト会場)
住所:青森県十和田市西三番町18-20

公式HPはこちら

Information

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「わくせいPROJECT」
高知県土佐市において、さまざまな背景の人々が集うスペースの立ち上げを目指すプロジェクト。土佐市地域おこし協力隊のミッション「海外からの技能実習生と地域住民との交流づくり」の一環として実施されている。

公式HPはこちら

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DOORS

阿部航太

デザイナー/文化人類学専攻

2018年よりデザイン・文化人類学を指針にフリーランスでの活動を開始。2018年から2019年にかけてブラジル・サンパウロに滞在し、現地のストリートカルチャーに関するプロジェクトを実施。2021年に映画『街は誰のもの?』を発表。近年はグラフィックデザインを軸に、リサーチ、アートプロジェクトなどを行う。2022年3月に高知県土佐市へ移住し、海外からの技能実習生と地域住民との交流づくりを目指す「わくせいPROJECT」を展開している。

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