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2025.06.04
アボリジナル・アートの展覧会から、直島に誕生する新美術館まで / 編集部が今月、これに行きたい アート備忘録 2025年6月編
Illustration / NARI (LITTLE FUNNY FACE)
たくさんの展覧会やイベントの中から、絶対に行くべきアートスポットを編集部が厳選! 毎月のおすすめをピックアップしてご紹介します。
今月は、近年注目を集めているオーストラリア先住民によるアボリジナル・アートの展覧会が開催。直島に新たに開館する「直島新美術館」では、会田誠や村上隆らによるこけら落とし展も。
先月紹介のイベントもまだまだ楽しめる!
「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」(アーティゾン美術館・東京)

イワニ・スケース《えぐられた大地》2017年、ウランガラス(宙吹き)、石橋財団アーティゾン美術館 © Courtesy the Artist and THIS IS NO FANTASY
地域独自の文脈で生まれた作品への再考が進む中、近年注目を集めているオーストラリア先住民によるアボリジナル・アート。本展は、複数の女性アボリジナル作家に焦点をあてた日本初の機会。所蔵作家4名を含む7名と1組による計52点の出品作品を通し、アボリジナル・アートに脈々と流れる伝統文化を感じながら、植民地時代を経て、どのように脱植民地化を実践しているのか、そしてどう創造性と交差し、現代のアボリジナル・アートを形作っているのか考察する。

マリィ・クラーク《ポッサムスキン・クローク》2020-21年、ポッサムの毛皮、ヴィクトリア州立美術館 © Maree Clarke
会期:2025年6月24日(火)〜9月21日(日)
会場:アーティゾン美術館 6・5階展示室
住所:東京都中央区京橋1-7-2
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「Keith Haring: Arching Lines 人をつなぐアーチ」(中村キース・へリング美術館・山梨)

Photo: Tseng Kwong Chi ©Muna Tseng Dance Projects Inc Art: ©Keith Haring Foundation
1980年代のアメリカを代表するアーティストのひとり、キース・ヘリング。彫刻制作の出発点となった作品のひとつが、全長5m超の大型彫刻《無題(アーチ状の黄色いフィギュア)》。本展では、中村キース・ヘリング美術館が新たに収蔵した同作品を日本初公開。彫刻を軸に多岐に渡る活動を辿りながら、没後35年を経た現在でも日常に溶け込むヘリングのアートの背景にある造形表現や哲学を紹介する。また、同館の建築設計を手掛けた建築家・北川原温の展覧会「北川原温 時間と空間の星座」も同時開催する。

《無題(踊る3人のフィギュア Bバージョン)》1989年 All Keith Haring Artwork @ Keith Haring Foundation Courtesy of Nakamura Keith Haring Collection.
会期:2025年6月7日(土)〜2026年5月17日(日)
会場:中村キース・へリング美術館
住所:山梨県北杜市小淵沢町10249-7
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「ライアン・ガンダー:ユー・コンプリート・ミー」(ポーラ美術館・神奈川)

Centred on the periphery, 2023 Courtesy the artist and TARO NASU, Tokyo. Photo:Misako Misako
彫刻、絵画、インスタレーションなど、コンセプチュアルアートの分野で活動しているライアン・ガンダー。日常の中に潜む物語や多層的な意味を、知的な遊び心と鋭いユーモアを交えながら表現し、国内でも高い人気を誇る彼が今回、全18点におよぶ作品を展示する。大半が日本初公開の新作であり、本展のための新作も多数。人間の言葉を話すカエル、読めない時計や仮想の国旗など、極めて具体的で捉えどころのない神秘に満ちた作品を通し、作家の現在地を見ることができる。

Closed systems, 2024 Courtesy the artist and TARO NASU, Tokyo. Photo:Ryan Gander Studio
会期:2025年5月31日(土)〜11月30日(日)
会場:ポーラ美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
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「非常の常」(国立国際美術館・大阪)

シプリアン・ガイヤール《Artefacts》2011年 フィルム(HDから35ミリフィルムに変換)、サウンド、ループ 国立国際美術館蔵 ©Cyprien Gaillard Courtesy the artist and Sprüth Magers
理不尽な攻撃や突然のクーデター、自然災害など、常態化した非常事態を生きている私たち。さらに、情報の流通が複雑なアルゴリズムに支配され、サイバー空間での攻撃がいよいよ本格化した超高度情報化社会では、誰もが生の根底に不安を抱き、焦燥感や拠りどころのなさを抱えていることだろう。本展はシプリアン・ガイヤール、潘逸舟、クゥワイ・サムナン、キム・アヨン、リー・キット、高橋喜代史、米田知子、袁廣鳴の表現を通じて、こうした「非常の常」の時代を見つめ、明日を生きる希望を探る。

リー・キット《Tearing the world apart, yet achieving absolutely nothing.》2025年 Courtesy of the artist / Lee Kit
会期:2025年6月28日(土)〜10月5日(日)
会場:国立国際美術館
住所:大阪府大阪市北区中之島4-2-55
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「アイデンティティシステム 1945年以降 西ドイツのリブランディング」(ギンザ・グラフィック・ギャラリー・東京)

1963 – Otl Aicher, E5/HfG Ulm – Lufthansa – Ticket
現代のコーポレート・デザインにみられるシステマティックなデザイン・ソリューションを生み出した、ドイツのデザイナーたち。本展では、デュッセルドルフにデザイン事務所vistaを構えるグラフィックデザイナーが設立した「A5コレクション デュッセルドルフ」の膨大なアーカイブの中から、貴重なポスターやビジュアル・アイデンティティの展開例、進行過程のスケッチやサンプルなどを展示。敗戦からの西ドイツの驚異的躍進を支えた、日常を視覚的にかたちづくるデザイン手法の体系的な発展を紹介する。

1971 – Celestino Piatti – The Germans (dtv #0738) – Book cover
会期:2025年5月27日(火)〜7月5日(土)
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー
住所:東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル 1F/B1
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「直島新美術館 開館年記念展示」(直島新美術館・香川)

©Tadao Ando Architect & Associates
直島の新たな美術館が開館。建築設計は直島にある「地中美術館」と同じ安藤忠雄によるもので、地上1階、地下2階の3階建てでカフェが併設されている。こけら落としの展示には、会田誠、マルタ・アティエンサ、蔡國強、Chim↑Pom from Smappa!Group、ヘリ・ドノ、インディゲリラ、村上隆、N・S・ハルシャ、サニタス・プラディッタスニー、下道基行 + ジェフリー・リム、ソ・ドホ、パナパン・ヨドマニーが参加。新作や代表作を公開する。

©Tadao Ando Architect & Associates
会期:2025年5月31日(土)〜
会場:直島新美術館
住所:香川県⾹川郡直島町 3299-73
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「ART OSAKA 2025」(大阪市中央公会堂 ほか・大阪)

アコーシュ・エゼル《Crossroads》油彩、キャンバス 2022 Courtesy of AISHO
23回目を迎える現代美術に特化したアートフェアが、大阪の2会場で開催される。「Galleries セクション」では、 日本国内のみならず、韓国や台湾からの参加も含む計44軒のギャラリーが一堂に会して展示・販売。また、大集会室では「映像プログラム」が行われる。大型作品やインスタレーションなどをダイナミックに展開する「Expanded セクション」は国内外19組の作家が出展。 今をきらめく若手から著名な作家まで、ギャラリストの審美眼によって選ばれた作品が一堂に揃う機会となる。

髙橋穣《装置 #1》 Mixedmedia 2023 Courtesy of Marco Gallery
会期:2025年6月5日(木)〜6月9日(月)※開場日時は会場によって異なる
会場:【Galleries セクション】大阪市中央公会堂 3階、【Expanded セクション】北加賀屋・クリエイティブセンター大阪
住所:【Galleries セクション】大阪市北区中之島1-1-27、【Expanded セクション】大阪市住之江区北加賀屋4-1-55
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