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ESSAY
2022.08.12
ミュージシャンが綴るアートのこと。 / Vol.01 NTsKi
Illustration / NATSUKI SOMEOKA
Edit / Eisuke Onda
夏はイベントで全国を駆け巡るミュージシャンの方々に、この時期に鑑賞した特別なアートの話を綴ってもらった。1年の中でも一番祭りが多い季節、芸術祭で、美術館で、ギャラリーで、あるいは街の中で、いったいどんな作品に刺激を受けたのか?
最初に登場するのは京都を拠点に活動し、世界的に評価されるミュージシャンNTsKiさん。紹介するのはストリートカルチャーの視点から公共空間におけるアートの可能性を模索するチーム「SIDECORE」がキュレーションした話題の展示「DOWN TO TOWN」。鑑賞後、東京の街への印象が変わったのだとか。
「DOWN TO TOWN」
2022年5月22日〜7月24日にSHIBUYA SKY 46階の展望室で開催した、匿名のアーティストグループ「EVERYDAY HOLIDAY SQUAD」による個展。アートチームの「SIDECORE」がキュレーションを担当。望遠鏡で街中に設置された作品を鑑賞したり、会場で配られる都市のマップを持って外に出かけたりすることで、新しい都市への視点を獲得できる。この展示の続きにあたる「patchwork my city」がPARCELで2022年8月28日まで開催中。/ 写真:三嶋一路
光がつなぐ、街と田舎
街に身をゆだねて歩くことは出来ても、田舎に身をゆだねて歩くことは出来ない。なぜなら、道が舗装されていないから。渋谷で毎日遊んでいたあの頃は、この街が自分の街であるようなそんな気がしていた。けど、いまでは東京に戻ってくるたびに「ここは私の居場所ではない」と感じるようになってしまった──。
アートチーム「SIDE CORE」がキュレーションする、匿名アーティストグループEVERYDAY HOLIDAY SQUADの個展「DOWN TO TOWN」に足を運んだ。渋谷スクランブルスクエア46階にある屋内展望回廊「SKY GYALLERY」から渋谷を見下ろす空間で展示が行われていた。街を見る視点の変化に沿った展示構成になっており、絵画作品から始まり、彫刻、映像など作品媒体は多岐に渡る。最後には独自に渋谷のマップが作成されており、街へ出かけるための誘導がなされていた。
映像作品「rode work ver.Tokyo 2018-2022」/ 写真:三嶋一路
どうして私は「ここは私の居場所ではない」と感じるようになってしまったのだろうか。映像作品の「rode work ver.Tokyo 2018-2022」は工事用作業服を着たスケーターが都内各所を疾走し、街の中に夜間工事現場を模したスケートパークを作り出す内容だ。今日も至る所で工事がずっと続いている。街は常に変化していて、いつしか私の知っている街ではなくなってしまう。
映像に登場する夜間工事用照明器具は仙台銘板という会社の商品であり、このライトは電波時計の仕組みで、点滅のカウントが全てオートで揃うことが特徴らしい。福島県と佐賀県の2局のアンテナの電波が連動して点滅する光は全国の工事現場に置かれたライトとシンクロしており、いま渋谷で光るこの光と、私が歩いていた故郷の光も同じタイミングで光っているということになる。
展望台のシティビューは夜になると「rode work ver.Tokyo 2018-2022」の映像が映り込むことも / 写真:三嶋一路
超高層の46階から街を見下ろし目に入るのは、ビルボードの光や街灯、車や航空障害灯などの光だ。キラキラと輝いていて、地上を歩いているときにこんな景色をイメージすることは到底出来ない。映像の光がガラスに反射して東京の街に溶け込んでいるように見える。この街はどんどん変化しているが、こうやって街の光を見ていると、私の居場所がここにもあるようなそんな気持ちになった。
infomation
NTsKiさんの活動の最新情報は公式HPにて。
https://ntski.com/
DOORS
NTsKi
アーティスト / ミュージシャン
京都出身。イギリス在住時に音楽制作を始め、帰国後2017年から本格的に活動を開始。自身の楽曲のアートワークやMVにおけるスタイリング、ディレクション、編集までを自ら担当するだけでなく、展示では空間演出やBGM制作も手がける。セルフ・プロデュース作以外では、Giant Claw、食品まつり a.k.a foodman、田我流やKMなどの作品に参加。その他に、落合陽一氏が統括ディレクターを務めSXSW2019に出展した経済産業省主催日本館や、ヴァーチャル・シンガーte'resa、オーストラリアのバッグ・ブランドへの楽曲提供などがある。2021年8月6日、ファースト・アルバム『Orca』を米オハイオのレーベル〈Orange Milk〉/〈EM Records〉よりリリース。
volume 03
祭り、ふたたび
古代より、世界のあらゆる場所で行われてきた「祭り」。
豊穣の感謝や祈り、慰霊のための儀式。現代における芸術祭、演劇祭、音楽や食のフェスティバル、地域の伝統的な祭り。時代にあわせて形を変えながらも、人々が集い、歌い、踊り、着飾り、日常と非日常の境界を行き来する行為を連綿と続けてきた歴史の先に、私たちは今存在しています。
そんな祭りという存在には、人間の根源的な欲望を解放する力や、生きる上での困難を乗り越えてきた人々の願いや逞しさが含まれているとも言えるのかもしれません。
感染症のパンデミック以降、ふたたび祭りが戻ってくる兆しが見えはじめた2022年の夏。祭りとは一体なにか、アートの視点から紐解いてみたいと思います。
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