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INTERVIEW
2025.04.23
BEAMSスタッフに聞く、ファッションと同じようにアートを楽しむ / #ファッションラバーのとっておきアート
Text & Edit/ Mo-Green Co.,Ltd
ファッションラバーに聞いた、とっておきのアートをご紹介するARToVILLAのリール企画『#ファッションラバーのとっておきアート』。⼤好きな「ファッション」を楽しむことと同じくらい、「アート」を楽しむのも⼤好き。そんな自分だけのこだわりを持ったファッションラバーたちに、自分だけの“とっておきアート”を聞いたら、それぞれのアートとの楽しみ方、向き合い方が見えてくるかも……?
今回は、第一弾で登場したファッション好きにはお馴染みのセレクトショップ〈BEAMS〉スタッフの動画コンテンツをぎゅっと一本にまとめて、アートの楽しみ方からとっておきのアート3選まで、気になるファッションラバーたちのアート事情をお届けします。
「アートは、日常を彩るための重要な要素」
#丸山恵利佳さん
〈International Gallery BEAMS(インターナショナルギャラリー ビームス)〉ディレクター/バイヤー

元々好奇心が強い性格だった私は、幼い頃から道端に落ちている石や葉っぱ、木の実などを集めて保管したりと、「アート作品」ではなくとも「自分にとって好きなもの」を見つけることが習慣化していた気がします。だからこそ、私にとってアートは特別な時にだけ楽しむものではなく、“日常的に必要なもの”だと思っているんです。日常にアートや音楽があると、感性が活発化されていろんな深い考えに行き渡ると思っていて、そのきっかけは美術的なものや色、音楽に触れた時が多い。そして何気なく日常で触れたアートが、仕事をする上で、インスピレーションとしていきてくることもある。私にとってアートは、日常を彩るための重要な要素として、常に身近にある存在なのかもしれません。
丸山恵利佳さんの3つの“とっておきアート”は?
ART001:
キャットボウル / マドカ・リンダル *ビームス別注

元々大好きだったマドカ・リンダルさんにビームス別注でつくっていただいたキャットボウル。猫がいないお家でも、日本らしい畳のお家でも……ライフスタイルやお部屋を問わず誰でも楽しむことのできるキャットボウルは、洋服以外で初めて別注した思い出のアートです。

マドカ・リンダルさんのいつもの作品とは異なり、キャットボウルという作品に合わせて猫の鼻と口になっているのも可愛い
ART002:
お気に入りの本 / アレック・ソス、パティ・スミスなど

本は、アート本に写真集、文庫本から純文学までいろいろ。基本的に写真がすごく好きなので、最近買ったお気に入りの写真集を集めてみました。最近はアレック・ソスや、パティ・スミスの写真集、「The Pictures on My Wall」などを愛読しています。

読むだけでなく、開いたり装丁を眺めたり、気軽に触れることができる本。日常的に手にとっていろんな側面から楽しんでいる
ART003:
ぬいぐるみ / ピエニルシッカ

ハンドメイドのものが好きで、ひとつお部屋にも可愛らしい要素を加えたいと思い、美術手帖のギャラリーイベントで購入しました。毎日目線が合うだけでほっこりしますし、愛でる楽しみもある作品。自分の中のひとつのアートとして捉えています。

ハンドメイドのぬいぐるみは、それぞれ顔や形が異なり、時間が経てば経つほど愛着も湧いてくる
「アートは、生活を豊かにするもの」
#西村尚悟さん
〈Pilgrim Surf+Supply(ピルグリム サーフ+サプライ)〉バイヤー/VMD

今働いているピルグリム サーフ+サプライがアートをコンセプトに掲げていることもあり、アートにも興味を持つようになりました。5年ほど前から実際に集めたりもしていますが、僕自身はアート全般に精通しているわけではないので、シンプルに“生活を豊かにするもの”と捉えて楽しんでいます。ふと思い出した時に楽しい気持ちになったり、自宅に友人を招いた時にひとつの会話のタネになるような、些細なことだけど自分自身や生活を豊かにしてくれる、きっかけのようなものですかね。言ってしまえば洋服もその延長線上にある気がします。ただ、ものを選ぶ時には僕なりのちょっとしたこだわりもあって、同じ作家さんの作品でも「なんでこれを描いたんだろう?」と、自分の興味がそそられる少し違和感のあるものを選んだりしています。
西村尚悟さんの3つの“とっておきアート”は?
ART001:
木工作品 / 西村建三

この作品はいただいたもので、ブルーラグの社長の奥さんのお父さんである西村建三さんという方の作品。ブルーラグの社長さんに会った時に、「今日誕生日なんですよ」と言ったらくれたものなんです。僕自身の好みを知ってくれている上でプレゼントしてくれたのが嬉しいですし、もの自体の背景はわからなくても、見た時のバランスが美しくて気に入っています。

経年変化が楽しめる、木の素材というところもお気に入りポイントのひとつ。他にもたくさんの木工作品が棚上に並ぶ
ART002:
似顔絵 / リーイズミダ

たくさん並んでいる絵画の中で、いちばん気に入っているリーイズミダさんの作品。公私共に仲良しなリーさんに彼女との記念日のタイミングで描いてもらった似顔絵です。似顔絵を頼んでいざ出来上がったものを見てみると、僕だけゴリラになっていたという……(笑)。近い距離だからこそ描ける砕けた作風が、より愛着も湧いて気に入っています。

知り合いのアーティストに描いてもらったアート作品たちが並ぶスペース。どれも思い入れが強い作品ばかり
ART003:
アフリカンクラフト / ロビ族のスツール

スツールはアフリカのもので、手に持っているのはロビ族のスツール。少し変わった形をしていますが、現地ではこのスツールを肩にかけて運んでいたみたいで、日本でいう井戸端会議のような場に持っていって腰を掛けながら談笑していたみたいです。他にもアフリカのスツールは有名なインテリアの元になっていたりと、“ルーツを知る”という意味でも面白く、集めています。

ロビ族のスツールの他にもセヌフォ族のものやレンディーレ族のものなど、アフリカンクラフトのスツールはまとめて飾っている
「アートは、いい刺激を与えてくれるもの」
#安武俊宏さん
ビームス オウンドメディアマネージャー

アートに興味を持ったのは、“気が付いたら”でした。確かなきっかけがあった訳ではありませんが、〈BEAMS〉の影響も大きかった気がします。僕にとってはアートも音楽も洋服も、すべて「黄金比」が重要ポイント。洋服で例えると色や素材のバランス感、アートをピックアップするとそれに加えて比率とかも関係してくるように思います。心に響くものは黄金比がかならず存在していて、その黄金比がアートにはいちばん隠されていると思っているんです。だから、アートからインスピレーションをもらって洋服に落とし込んだりして楽しんでいます。普段無意識に過ごしているだけじゃ気付かない、そんな何かを気付かせてくれる、常にいい刺激を与えてくれるものが僕にとってのアートですね。
安武俊宏さんの3つの“とっておきアート”は?
ART001:
木工作品 / 内山玲

内山玲さんの作品はいくつか持っているのですが、こちらは少し変わったオブジェで、壁にかけたり置いたりと持ち主によって飾り方を変えられるような作品。丸っこい形のオブジェは、中に鏡が仕込まれていて、光に反射した時に壁に色が映ったりするんです。外の光や部屋の光で異なる色が映し出され、いろんな見え方が楽しめるかなり面白い作品です。

手仕事ならではな不均一な形、木目とのバランスなども気に入っているポイントのひとつ
ART002:
ベルベル人女性の写真&ラクダの置き物 / モロッコで購入したもの

写真はモロッコのマラケシュにある写真美術館で購入したもの。新婚旅行で訪れた写真美術館に大きく飾られていました。100年ほど前のベルベル人女性の写真は表情だけでなく、装いも素敵なんです。ラクダの置物はその時に5〜6歳の小さな女の子から購入したんですが、200~300円にしてはすごく手が込んでいて気に入っています。

旅先ならではなアート作品は、一目見ただけでその時の思い出も一緒に思い出すことができて記念にもピッタリ
ART003:
イラスト作品 / MR. SLOWBOY

これはロンドン在住のイラストレーター、ミスター・スローボーイさんにいただいた作品。実は描いてもらったというより、知らない間に描いてくれたもので、よく見ると当時の洋服を着た僕が描かれています。SNSでお礼の連絡をした際に実際の絵を郵送してくれて、額装して大切に飾っています。

作品集の中に掲載されたり、フランスのファッション雑誌『MONSIEUR MAGAZINE』の表紙にもなったりと、より思い出深い作品に
「アートは、発想の元をくれるもの」
#日下拓哉さん
〈ビームスT 原宿〉 ショップマネージャー

元々小さい頃からアートが好きで、美術学校へ行き、デザインの仕事をした過去もあります。だからアートに対しては「好き」という感情だけでは語れない、いろんな気持ちがあるんです。絵を描くことはできなかったけど、今は別の形で大好きなアートに関われているので、僕にとってアートはいろんな気持ちを思い出させてくれたり“発想の元をくれるもの”になっています。僕は洋服でもアートでも「顔が見える人のもの」を買いたいと強く思っていて、その姿勢を持ち続けることを自分の美学として貫いているので、自宅のものはほとんど知っている人の作品です。そうしていろんな人たちのつくったものに直接触れてきたことで、今ではファッション、アート、自転車など、全部学生時代よりももっと好きになりました。
日下拓哉さんの3つの“とっておきアート”は?
ART001:
油絵 / DISK

この作品はグラフィティライターのDISKさんの油絵で、ビームスT 原宿でイベントを開催させていただいた時に展示したものです。僕自身、美術をやっていた人間なので油絵や水彩に心が動かされやすいのはもちろんなんですが、そもそもグラフィティライターが油絵って真逆じゃないですか。そのギャップがグッと刺さって購入させていただきました。

独特なテクスチャの油絵は、一枚でも存在感を放つ。作家の背景を知っているからこそ、より一層好きになった作品
ART002:
ZINE / 友人たちがつくったもの

ZINEは友達からもらったものも多いのですが、自分も昔作っていたので交換したものも。ZINEが名刺がわりになっていた時期もありましたね。独特なハンドメイド感というか、媒体が持つ距離の近さなど……その人の性格、見てきたものがライトに表現されているのがいい。一部つくるのに何千円、何万円、かかるものだったら載せないような写真を載せていたり、ラフな感じが好きなんです。

自分の酔っ払っている姿が載っているもの、いちばん仲のいい友達がつくったもの、自分のタトゥーを彫ってくれている人のものなど、どれも語れるZINEばかり
ART003:
写真 / Massan Fluker

サンフランシスコの坂の写真は、フォトグラファー兼ライダーのマサンが撮った作品。彼が所属する自転車クルーMASHに影響を受けて訪れるようになったサンフランシスコの写真で、彼と仲良くなった思い出も含めて気に入っています。この作品を見ると、自分の中の若い時の柱や気持ちを思い出させてくれるので、すごく好きな写真です。あの時あの坂で死にかけたな、あの時あの辺でバカしていたな……と、かけがえのない思い出に浸れる作品。
ーアートは生活の中にひとつの彩りとして自然に存在するもの
〈BEAMS〉スタッフに“とっておきアート”を聞いてみたら、ファッションやそれぞれの趣味を楽しむのと同じように、生活の中のひとつの楽しみとしてアートを楽しんでいる姿が見えてきた。ファッションで自分自身の美学を表すように、アートも等身大の自分で楽しむ。アートにハードルが高く感じる人も、まずは洋服を選ぶように「なんかいいな」の直感で、自分だけの“とっておきアート”を見つけてみては?
DOORS

丸山恵利佳
〈International Gallery BEAMS(インターナショナルギャラリー ビームス)〉ディレクター/バイヤー
千葉県出身。BEAMS RECORDSやInternational Gallery BEAMSでのショップ経験を経て、2018年バイヤーに。現在はInternational Gallery BEAMSのウィメンズディレクターとして国内外の新進気鋭ブランドを紹介。趣味は散歩と料理。休日になるとフィルムカメラを持ち、街歩きをする日々を楽しんでいる。
DOORS

西村尚悟
〈Pilgrim Surf+Supply(ピルグリム サーフ+サプライ)〉バイヤー/VMD
1992年兵庫県生まれ。2013年よりビームス原宿店、2015年ピルグリム サーフ+サプライ立ち上げを経て、現在は同店でメンズのバイイングとVMDを統括。「暮しが仕事 仕事が暮し」をモットーに、サイクリング、キャンプ、古着収集、家具屋巡りなど、日々の生活で培った感性を活かして活躍中。
DOORS

安武俊宏
ビームス オウンドメディアマネージャー
福岡県出身。札幌育ち。文化服装学院卒業。現在はメンズ/ウィメンズ のPRを統括する傍ら、「BEAMS AT HOME」シリーズのディレクション、服飾専門学校での講師などマルチに活躍中。 3度の飯よりおしゃれな洋服や雑貨、インテリアが大好き。嫌いな食べ物は"エビ"。
DOORS

日下拓哉
〈ビームスT 原宿〉 ショップマネージャー
埼玉県出身。 東洋美術学校卒業。現在はBEAMS T原宿のショップマネージャーとして活躍。趣味のブラジリアン柔術は紫帯。毎朝、バナナ2本、アボカドを食す事が日課。
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