• ARTICLES
  • 連載「作家のアイデンティティ」Vol.7 / 美術作家 山本雄教 編

SERIES

2022.10.21

連載「作家のアイデンティティ」Vol.7 / 美術作家 山本雄教 編

Photo / Kengo Yamaguchi

独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動する、とに〜さんが、作家のアイデンティティに15問の質問で迫るシリーズ。今回は、1円玉を使った作品が印象的な山本雄教さん、小さく見過ごされがちなモチーフに新たな見方と価値を生み出す山本さんの背景に迫ります。

SERIES

連載「作家のアイデンティティ」Vol.6 / 作家 遠藤文香 編 はこちら!

連載「作家のアイデンティティ」Vol.6 / 作家 遠藤文香 編 はこちら!

SERIES

連載「作家のアイデンティティ」Vol.6 / アーティスト 遠藤文香 編

  • #アートテラーとに〜

今回の作家:山本雄教


作品は一円玉のフロッタージュによる平面作品からインスタレーションまで幅広い。
「財布の中の一円玉、そんなすぐそこにあるものが実際はあらゆるものに繋がっている」とは作家山本雄教の言葉。
小さな一円玉から作られる作品には、彼ならではのユーモアと風刺がこめられ鑑賞者の思考は無限に広がる。

 

One coin people_172.0×360.…

《One coin people》
172.0×360.0cm / 麻紙、鉛筆、一円硬貨のフロッタージュ

Blue flower_168.0×168.0cm_ブルーシート 金属箔_2016_1-min

《Blue flower》
168.0×168.0cm / ブルーシート、金属箔

 

tony_pic

山本雄教さんに質問です。(とに〜)

山本さん、お久しぶりです。ARToVILLA MARKETでの展示、楽しみにしています。平塚市美術館で現在開催中の展覧会も拝見させていただきました。作品はよく拝見しているので、いろいろ見知った気になっていましたが、改めて考えてみたら、聞いてみたいことが多々あったので、この場を借りて15問ほど質問させて頂きます。時間をかけて丹念にコツコツと作品を制作される山本さんのことなので、きっと丹念にコツコツとアンケートを書き上げてくれることでしょう。本業の制作に支障がない範囲でどうぞよろしくお願いいたします。

 

Q.01 作家を目指したきっかけは?
大学三年生の頃、はじめて自分の考えを込めた作品を作ることができ、本格的に作品制作にはまっていきました(無数のエスカレーターに無機質な人々が乗っているという暗い作品でした)。作家を目指すというより、作品を作り続けたい、それを誰かに見て欲しいという欲求があり、目の前のことに取り組み続け現在に至ります。
遡ったきっかけは芸術系の高校に入ったからですが、それは中学校で不登校になったからでした。不登校になっていなかったら、たぶん全然違う人生を歩んでいたと思います。

 

Q.02 山本さんにとって日本画の定義とは?
定義づけるという質問から離れてしまうかもしれませんが、以下が日本画を学んだことをきっかけに、特に影響を受けている点になります。
・国名の冠がついている特殊性と歪み。良くも悪くも近代以降の日本の空気感を象徴しているところ
・余白から無限の広がりを生むような、弱さの中の強さ
・日常への目線
・大胆さとユーモア
・麻紙や箔といった素材(岩絵具もそのうち使いたいと思っています)

また、日本画家の安田靫彦が、同じく日本画家で教え子の小倉遊亀に送った「一枚の葉っぱが手に入ったら、宇宙全体が手に入ります」という言葉は、学生時代から制作の指針のひとつになっています。

日本画という言葉があまりに馴染み過ぎているので、日本人は実感しづらいですが、これってだいぶ不思議なことなんですよね。アメリカ画、フランス画、イギリス画と、それぞれの国の人は自国の絵画をそう呼ばないですからね。(とに〜)

 

Q.03 これまでに嫉妬した芸術家はいますか?(物故作家を含む)
こういった意図のものを作ろうかな…と思うと、すでにアンディ・ウォーホルが作品にしていることがあります。嫉妬というより、すごいな…と思います。あとは、ウォーホルが亡くなってから30年以上が経っていますが、そこから私たちが暮らす社会自体が根本的にはあまり変わっていないのかなとも思います。

 

Q.04 無数の1円玉をフロッタージュしたり、無数の米を描いたり。正直なところ制作中に飽きませんか?もし飽きるとしたら、どうやってモチベーションを回復していますか?
作品完成までの道のりとしての作業なので、飽きそうなようであまり飽きません。肉体的には疲れもしますが、確実に完成に向けて進んでいくので精神的な疲れは少なめです。モチベーションの回復は完成した作品が良いものだと思えたときで、逆に良くない時は散々やってきてこれか…とがっくりきます。(当たり前かもですが)

 

Q.05 大量の1円玉はどこで手に入れてるのですか?両替の手数料があがったので気になっています。
日頃から使わずに貯めていますが、それでは足りないので銀行で両替しています。おっしゃるように両替の手数料はここ数年で爆上がりしており、困りものです。お手元に1円玉が余っておられる方は、両替しますのでぜひご連絡を!笑

 

 

Q.06 山本さんにはさまざまなタイプの作品がありますが、これまでボツになったアイディアはありますか?
作ってみてあまり良くないなぁというものは結構あります。一旦ボツにして、数年後改めて別の方向から作るものがあったり、ボツというより一旦寝かしておこうという感じです。寝かしているので、アイデアの内容は秘密です 笑

 

Q.07 アトリエの一番のこだわり or 自慢の制作道具などを教えてください。
自慢の制作道具とかではないのですが、自分の生まれ年(昭和63年)の1円玉は、作品に使わずに貯めています。同じ時代を生きてきた時間が、硬貨それぞれに蓄積されているような気がしています。いつかまとめて作品に使おうと思っています。

 

 

Q.08 今まで言われた作品の感想で一番印象に残っているものは何ですか?
個展会場の床に1円玉を敷き詰め、壁面の作品を近くで見るためにはそれを踏んでいかなければならない、という展示をしたことがありました。特に年配の方などは最初に難色を示す方も多かったのですが、足を踏みいれると「不思議な開放感がある」と感想を言われる方が多く、興味深かったです。また、子供たちが「お金やー!」と走り回っていたのも面白かったです。老若男女で表に出てくるテンションの違いはあっても、内側に湧いている感情は実は似通っているのかもしれないとも思いました。

1円玉っていうのが絶妙ですよね!
これが500円玉、ましてやお札だと、何ともいやらしくなってしまうので。(とに〜)

 

Q.09 職業病だなぁと思うことは?
何をするにしても、作品制作に繋げて考えているところがあります。それは縛られているという感じではなく、その目線があることによって何気ないことでも楽しく過ごすことができるという、良い病です。たとえネガティブなことであっても、表現として昇華できる可能性があることは、ありがたいことだなと思います。

 

Q.10 今日は締め切りもやらなければならない作業もなく、丸一日予定が空いています。さて、何をしますか?
展覧会を見にいきます。見にいきたいものがあれば、遠くても足を伸ばします。あとはそれ以外だと、サッカーを見るか、漫画を読むか、音楽のライブに行くかといったところです。

 

Q.11 青春時代、一番影響を受けたものは何ですか?
Radioheadというイギリスのバンドが好きなのですが、彼らがアルバムごとに大きく表現を変化させていく時期がありました。私自身はリアルタイムではなく後追いなのですが、セールス的にも音楽的な評価でも大きな成功を収めながらも変化を恐れない姿勢は、青春時代から今に至るまで、私にとって表現者としてのあるべき心構えになっています。

 

 

Q.12 京都で育った山本さんに質問です。京都のオススメスポットを教えてください。
細見美術館にはぜひ行ってみて欲しいです。地下に渡る立体的な空間に、いつも多彩な企画展が開催されています。

 

Q.13 好きなお笑いは?(芸人に限らず、ギャグ漫画でもコメディ映画でも可)
高校時代にブラックマヨネーズさんのラジオをMDに録音して繰り返し聴いていて、数年で番組は終わってしまったのですが、その直後にラジオからの延長線上のようなネタでM1を優勝されたときは心から嬉しかったです。漫才は日本の生み出した最高の芸術のひとつだと思っています。
制作中は芸人さんのラジオをよく聴いていて、最近特に面白いのはマユリカさん、以前からずっと聴いているのはオードリーさん、髭男爵の山田ルイ53世さんのラジオです。

そのラジオの存在は知りませんでしたが、録音してまで繰り返し聴くというのは相当なヘビーリスナーですね!しかしまた、MDっていうのが懐かしいですね。(とに〜)

 

 

Q.14 「これだけはどうしても苦手…。」というものを教えてください(理由も含めて)
自分に関わりがない、あまり関心のない物事に対しての、冷淡な言動や行動が苦手です。無理に寄り添ったり、コミュニケーションを取る必要もないですが、そんなに攻撃的になる必要があるのだろうか…という場面を、特に近年よく見るような気がします。

 

Q.15 もしも作家になってなかったら、今何になっていたと思いますか?
クリエイティブな仕事はしていないような気がします。どこかの会社の末席に勤められていれば御の字といったところでしょうか。とりあえず出世はできないと思います 笑 それはそれで楽しかったかもしれないですね。そしてそもそも今自分が「作家」なのかどうかもよく分からないところではありますが…。

 

ご回答ありがとうございました!
どの回答も内容が濃かったので、僕のまとめコメントなんて必要ないですよね。強いて言えば、ウォーホルの名前が挙がったのが興味深かったです。意識的ではないでしょうが、ウォーホルも$マークをモチーフにした作品を残しているので、不思議な縁を感じてしまいました。
しかし、これだけ面白い作品を生み出し続けている山本さんが、クリエイティブな仕事に就いていない可能性があったというのは意外ですね。「一円を笑う者は一円に泣く」とは言いますが。「一円を笑う者は一円で笑う」。これからも楽しい作品を期待しています。寝かせたネタが起きるその時も楽しみにしています。(とに〜)

 

infomation

ARToVILLA MARKET

 

ARToVILLA-Market_web-banner

ARToVILLA主催、現代アートのエキジビション兼実験店舗「ARToVILLA MARKET」を開催いたします。
山本雄教さんも出展予定です。

■会期
2022年11月11日(金)〜11月13日(日)

■会場
FabCafe Tokyo, Loftwork COOOP10
〒150-0043
東京都渋谷区道玄坂1丁目22−7道玄坂ピア1F&10F
神泉駅から徒歩5分、渋谷駅から徒歩10分
Google map

■入場料
無料

詳しくはこちら

 

infomation

今後の展示スケジュール一覧

2022年10月1日(土)-11月27日(土)
「市制90周年記念展 私たちの絵 時代の自画像」平塚市美術館 / 神奈川

2022年11月11日(金)-13日(日)
「ARToVILLA MARKET」FabCafe / 東京

2022年12月12日(月)-22日(木)
「個展」ギャラリー和田 / 東京

2023年1月20日(金)-28日(土)
「日本画擬態流用」ギャラリーSIACCA / 東京

2023年2月21日(火)-3月5日(日)
「 META 2023」神奈川県民ホールギャラリー / 神奈川

ARTIST

山本雄教

アーティスト

1988年京都府生まれ。2013年京都造形芸大大学院を卒業。日本画を学ぶ。 その個性で在学中より、様々な展覧会での受賞を重ね発表の場を広げている。 近年は東京都美術館、上野の森美術館、平塚市美術館など美術館での発表も増えている。 作品は一円玉のフロッタージュによる平面作品からインスタレーションまで幅広い。 「財布の中の一円玉、そんなすぐそこにあるものが実際はあらゆるものに繋がっている」とは作家山本雄教の言葉。 小さな一円玉から作られる作品には、彼ならではのユーモアと風刺がこめられ鑑賞者の思考は無限に広がる。

DOORS

アートテラー・とに~

アートテラー

1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。 芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。 美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。 アートブログ https://ameblo.jp/artony/ 《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館)

volume 04

アートを観たら、そのつぎは

アートを観るのが好き。
気になる作家がいる。
画集を眺めていると心が落ち着く。

どうしてアートが好きですか?
どんなふうに楽しんでいますか?

観る、きく、触れる、感じる、考える。
紹介する、つくる、買う、一緒に暮らす。

アートの楽しみ方は、人の数だけ豊かに存在しています。
だからこそ、アートが好きな一人ひとりに
「アートとの出会い」や「どんなふうに楽しんでいるのか」を
あらためて聞いてみたいと思います。

誰かにとってのアートの楽しみ方が、他の誰かに手渡される。
アートを楽しむための選択肢が、もっと広く、深く、身近になる。

そんなことを願いながら、アートを観るのが好きなあなたと一緒に
その先の楽しみ方を見つけるための特集です。

新着記事 New articles

more

アートを楽しむ視点を増やす。
記事・イベント情報をお届け!

友だち追加