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2023.09.08
アーティスト 小池正典 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.23
独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動する、とに〜さんが、作家のアイデンティティに15問の質問で迫るシリーズ。今回は、日常の中に揺らぐ不安定さを陶器で立体作品にするアーティスト、小池正典さんの背景に迫ります。
アーティスト 篠崎理一郎 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.22 はこちら!
今回の作家:小池正典
2006年明星大学造形芸術学部卒業、09年佐賀県有田窯業大学校卒業。主な個展に、「転がる石」(PENSEE GALLERY、群馬、2021)、「明日発掘される未来」(gallery MUMON、東京、2019)、「おはようpeopleおやすみdancing」(NANJO HOUSE、東京、2019)、グループ展に、「TAG BOATartfair」(産業貿易センター、東京、2021)、「SICF19」(spiral、東京、2019)、「怪獣たちのいるところ」(TAGBOATgallery、東京、2018)など。受賞歴に、TOKYO DesignWeek Art部門グランプリ(2016)、TAG BOAT independent台北特別審査員賞、wonder seed2018入選など。
「無常感のようなもの表現しているのだと思う。あらゆるものの有限性は喪失感をはらむ。いつかは物は壊れてしまう、身体も失われてしまう。近年の自然災害などで感じるのは圧倒的な大きな力で一瞬にして崩れていく平穏な日常があり常に揺らいでいる。不安定さの上に私たちの営みは成り立っている。私を取り巻く日常の風景と絶えず変化する日常に潜む愛おしさを記録したい。」
《夕立観測所》2022 190×80×60 陶土 釉薬 絵の具 鉄 木 銀箔
小池正典さんに質問です。(とに〜)
精霊なのか?怪獣なのか?はたまた、ゆるキャラ的なものなのか?謎の生命体を生み出し続ける小池さん。というか、そもそも、生命体かどうかすらわかりません。いや、でも、脚のようなものは生えてるしなぁ。正直言って、小池さんの作品は何だかよくわかりません(笑)。ただ、何だかよくわかりませんが、観ているだけで心が軽やかになるというか、微笑ましい気持ちになります。それに加えて、《夢見るソーダ水》とか《ともしびパッショーネ》とか《ヨヨヨッッ》とか、タイトルも微笑ましいです。
そんな小池さんですから、きっとアンケートの回答も微笑ましいものとなるでしょう(プレッシャーになりましたら、ごめんなさい!)。
Q01. 作家を目指したきっかけは?
物を作る事と新しい遊びを考えるのが子供の頃から好きでした。昔から1人で楽しむことが出来る人間でした。集団の中に入って仕事をすることも苦手意識があったというのと、自分にできる事をなんとなく続けてます。作家の自覚はあまりないんですが、これからも楽しいことを考えて生きていくつもりです。
Q02. 小池さんの作品の多くは、生きもののように感じられますが、これらは精霊や怪獣的なものなのでしょうか?
生き物やキャラクターを作ろうとは思っていませんでした。
風景をモチーフに絵を描くのが元々好きだったのですが、風景画を立体物にしようとしたのが始まりです。季節や時間によって変化していく日常の風景をギュッとまとめたようなものが立体作品になってます。時間の経過を感じられるものや風化していくものに宿る記憶のようなものを形にしたいと思ってます。身近なものや自然物に魂が宿るというアニミズムの思想に近いかもしれません。
精霊や怪獣っぽく見えるのはそのせいかもしれません。
Q03. 彩色のこだわりはありますか?
色は全部好きです。特に強い色を使うのが好きです。
強い色を使うとなんだか儚い気持ちになります。いずれ褪せていくからです。
Q04. アトリエの一番のこだわり or 自慢の作業道具など
こだわりは特にありませんが、大事なものは電気窯です。
Q05. アイデアが浮かばない!そんな時は何をしますか?
音楽を聴きながら散歩します。なにか思い浮かんだらメモします。早く寝て早く起きます。
Q06. 小池さんの作品はタイトルも特徴的ですよね。タイトルを決めてから描いていますか?それとも描き終わってからタイトルを決めていますか?
日頃から詩や言葉を書き留めています。
それをもとに作品を作ることが多いですが、形にしてから名前をつけるようにタイトルをつけることもあります。
Q07. 作品に対する感想で、今まで言われて嬉しかった言葉は何ですか?
懐かしさを感じる、子供の頃を思い出す、なんか切ない、エモーショナル、といった言葉。
これらは造形の面白さだけの言葉ではないと感じるからです。
Q08. 「アートって何の役に立つの?」と言われたら、どのように返しますか?
これは難しい質問です。僕自身、役にたつかどうかで作品を作っていないからです。物事を役に立つかどうかで判断して生きるのも大事な尺度ですが、そんな尺度に疲れてしまった時に逃げてくる場所だと思ってます。絶望をしなくても済むように。
Q09. 職業病だなぁと思うことは?
テクスチャーの組み合わせを考えることが多いので、物の素材感を確かめたくなります。
何でも触って手触りを確かめたくなります。
Q10. 居酒屋でメニューにあったら必ず頼むものは何ですか?
枝豆 ポテトフライ
Q11. 好きな妖怪や怪獣を教えてください。
ヒッポリト星人
Q12. 青春時代、一番影響を受けたものは何ですか?
鳥山明のイラスト 宮崎駿の映画
Q13. 「日本人で良かったなぁ」と思う時はどんな時ですか?
四季があること
Q14. 世の中にあるものの中で「このネーミングセンスは秀逸!」と思ったものは何ですか?
可愛いし覚えやすいから、アイスの「ピノ」
Q15. もしも作家になってなかったら、今何になっていたと思いますか?
苦手な物を避けてきた結果今に至るので想像するのが難しいです。
憧れの職業は建築家です。建築を一から学びたいです。
日頃から詩や言葉を書き溜めていらっしゃるからでしょう。質問へのご回答の語感やワードのチョイスが、読んでいて実に心地よかったです。ご回答そのものが、まるで詩のような。
作品は特に生き物やキャラクターを意識しているわけでなく、日常の風景をギュッとまとめて立体化させたものだったのですね。そう言われて、改めて観てみると、それぞれの色が空や大地、木や花といったものに感じられてきました。それも、かつて自分が目にした空や花の色。記憶の片隅にある光景が呼び戻されたようで、不思議と子どもの頃を思い出しました。
そうそう、子どもの頃を思い出したといえば、わざわざここで言うことではないですが、ヒッポリト星人のソフビ人形を持っていました。
Information
今後の展示スケジュール一覧
One Time One Art
■会期
2023年9月27日(水)→10月10日(火) ※最終日は20時閉場
※EC販売は最終日17時までとなります。
■会場
大丸梅田店 1階 東 イベントスペース
〒530-8202 大阪府大阪市北区梅田3丁目1−1
※一部作品は店頭限定販売となりますのでご了承ください。
■入場
無料
ARTIST
小池正典
アーティスト
2006年明星大学造形芸術学部卒業、09年佐賀県有田窯業大学校卒業。主な個展に、「転がる石」(PENSEE GALLERY、群馬、2021)、「明日発掘される未来」(gallery MUMON、東京、2019)、「おはようpeopleおやすみdancing」(NANJO HOUSE、東京、2019)、グループ展に、「TAG BOATartfair」(産業貿易センター、東京、2021)、「SICF19」(spiral、東京、2019)、「怪獣たちのいるところ」(TAGBOATgallery、東京、2018)など。受賞歴に、TOKYO DesignWeek Art部門グランプリ(2016)、TAG BOAT independent台北特別審査員賞、wonder seed2018入選など。
DOORS
アートテラー・とに~
アートテラー
1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。 芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。 美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。 アートブログ https://ameblo.jp/artony/ 《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館)
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