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2022.02.11
アート作品ってどこで購入できるの? / 連載「和田彩花のHow to become the DOORS」Vol.2
Edit / Moe Ishizawa
Photo / Yuri Inoue
Illustration / Wasabi Hinata
アイドル活動のかたわら大学院で美術史を専攻し、現在までに2冊の美術関連書を上梓するほどアートを愛する和田彩花さん。しかしそんな和田さんも、アートの購入場所や手段、保存環境などの多くの課題を前に、なかなかアート作品の購入に踏み切れていないといいます。
ギャラリーやオークション、アートフェアといった実空間での購入に加え、コロナ禍のオンライン化によりアートECも盛り上がりを見せる今日。人それぞれ性格が違うように、どうやらアートの購入においても自分がどこに重きを置くかで、どのようにアートを購入すべきかが変わるようです。
「和田彩花のHow to become the DOORS」は、今更聞けないアートにまつわる疑問やハウツーを、専門家の方をお呼びして和田彩花さんとともに紐解いていく連載シリーズ。第2回は、第1回に引き続き、世界的オークションハウス「サザビーズ」での経験を生かし、現在はGINZA SIX内にあるアートギャラリー「THE CLUB」のディレクターを務める山下有佳子さんに、「アートの買い方・飾り方」についてお話を伺いました。
第1回「美術館とギャラリー、何が違うの?」では、ギャラリーはセレクトショップに近い場所であり、アーティストや作品を選ぶギャラリストの感性によって空間の色が大きく決まっていくというお話をしていただきました。
アート作品を買いたい! どんな選択肢が挙げられる?
和田彩花さん
山下有佳子さん
和田:第1回「美術館とギャラリー、何が違うの?」では、ギャラリーはセレクトショップに近い場所であり、アーティストや作品を選ぶギャラリストの感性によって空間の色が大きく決まっていくというお話をしていただきました。今回はもう少し踏み込んで、より実践的な「アート作品の購入方法」について教えていただければと思います。アートを買える場所もさまざまですが、どんな種類があって、それぞれどのような特徴があるんでしょうか?
山下:まずひとつはオークションです。世界的には、私が以前勤めていたサザビーズやクリスティーズといった老舗のオークションハウス、そして日本でもSBIアートオークションなどが有名ですね。私はサザビーズ・ロンドンでのインターンを経て、帰国後にサザビーズ・ジャパンに入社し、在籍中には白髪一雄氏の作品『激動する赤』(1969年)が530万ドル(約5億4000万円)で落札されたオークションを担当していました。
和田:ものすごく高額落札で驚きです!
山下:オークションは価値ある作家を見つけ出し、投資を兼ねて作品を収集していくことが醍醐味です。第1回でお話ししたセカンダリーも、オークションを中心に回っています。おさらいすると、所属アーティストを抱えたり、アーティストから直接作品を預かって販売する一次マーケットが「プライマリー」、プライマリーで販売された作品が一度市場に出回り、再び売買されるマーケットが「セカンダリー」です。
和田:私は以前取材で、SBIアートオークションの現場を見せていただいたことがあります。事前に出品作品のカタログを見て何を買うか目星をつけておくことができるけれど、現物を前にするとまた新しい発見や感動がたくさんありました。
山下:昨今のアート業界では、コロナの影響によって現物を見ずに作品を買う方も増えています。築地市場のようにたくさんの人々が直接会場で競りあっていた活気あるオークションと同じくらい、オンラインのオークションも台頭してきています。最近はアートのECサイトも活発ですよね。ここ1〜2年のコロナ禍で、日本でもアート作品を買う場所や手段にバリエーションができました。
和田:でもやっぱり私自身は、アートを購入するとなったら現物を見ないとなかなか購入に踏み切れないかな……。私のように実際に作品が展示されている状態を見てから検討したい人にとって、ベストな購入場所はギャラリーなのでしょうか?
山下:そうですね。なので極端な話、現物を見たうえで買うか、忙しい自分のライフスタイルに合わせて情報ベースで現物を見ずに買うかの2つが、最近のアートを買う際の選択肢かと思います。ただ、ギャラリーではアーティストから預かった作品の全部をつねに展示しているわけではありません。人気アーティストの作品は、展示開始からまもなく完売してしまうことも多いんです。それでも購入を諦めきれない場合は、ギャラリースタッフに「このアーティストの作品が欲しいのですが、もしまだここに飾られていない作品があれば見せていただけませんか?」と聞いていただくと、別の作品が出てくる可能性もありますよ。
和田:タイミングが大事なんですね。気に入った作品をその場で買うことができるのは嬉しいです。ちなみに、お洋服のセレクトショップだと数ヶ月に1回商品の入れ替えがありますが、ギャラリーではどれぐらいのペースで新しいアートに出会えるんでしょうか?
山下:ギャラリーによりますが、大体1ヶ月ごとに企画展を開催し、その都度企画に沿って作品を入れ替えていきます。ギャラリー以外ではアートフェアというものもありますが、国内外からたくさんのギャラリーが集まって開催される「アートの見本市」のようなイメージを持っていただければと思います。また、最近では芸大・美大の卒業制作展でも作品が販売されていたりしますし、コレクター自身が直接作家さんを訪ねて作品を購入することもできます。
和田:好きなアーティストの作品を買うために展示初日にギャラリーへ行く人もいれば、一方で投資のスタンスで熱心にオークションに参加する人がいたりと、人それぞれのアートの買い方があって面白いですね。最近では、競りを行わない入札形式のみの「サイレントオークション」を取り入れるギャラリーや、若手から中堅のアーティストの作品まで均一価格のアートフェアなどもあるらしく、業界全体で新しいアート売買のシステムを模索している時期なのかなと思います。
山下:そうですね。実際に、アートの買い方やライフスタイルが大きく変容してきているのを感じます。最近はアートコレクターの年齢層も全体的に若くなってきているんですよ。それこそ、昨年THE CLUBが上海のアートフェアに出展したときは、20〜30代の方たちに多く購入していただきました。なので私自身も、若い方たちの感覚に合わせてアートビジネスを考えるようになりました。アートもギャラリーも社会と密接につながっていて、それによってまた社会も動いていきます。
生活空間に飾るからこそ、映える作品もある
和田:アートを買ったあとのことについても聞きたいです! 購入したアートをいざ家に飾るときに、持ち家なのか賃貸なのかも大きく関係しますし、温度や湿度、壁の素材など作品周りの環境を調整しづらいと思います。美術館のようにとはいかなくても、飾り方や保存方法で気をつけることはあるんでしょうか。
山下:素材が紙なのかキャンバスなのか、もしくは陶磁器なのか、作品の特性によって耐久性も変わってきます。作品を購入される際には、アーティストやギャラリーの方などの専門家の方にアドバイスを聞くことをおすすめします。
和田:ありがとうございます。すごく参考になります……!
山下:美術館もギャラリーも多くはホワイトキューブ(白い立方体の内側のような展示空間)という非日常空間ですが、家は家で自然光が入ったりと、生活空間だからこそ作品が映えることもあるんです。やっぱり壁に作品を飾るだけで家の雰囲気が大きく変わりますよ。
和田:なるほど。同じアートでも、朝と夕方の光の入り方で違う表情を見られるのも家に飾る醍醐味ですね。あまり難しく考えずリラックスして好きなアートを選んでみようと思います!
THE CLUB
丁寧なキュレーションのもと、日本ではまだ目にする機会が少ないコンテンポラリーアーティストを中心に、時代や分野を超えた展示を行うギャラリー。GINZA SIX6階 銀座 蔦屋書店内に2017年にオープン。
「THE CLUB」は2022年6月に閉廊
『私的礼讃 LIVE Album』 / 和田彩花
2022年1月30日(月)配信リリース
- エピローグ (Live at SHIMOKITAZAWA SPREAD , TOKYO, 2021)
- 空を遮る首都高速 (Live at SHIMOKITAZAWA SPREAD , TOKYO, 2021)
- mama (Live at SHIMOKITAZAWA SPREAD , TOKYO, 2021)
- スターチス (Live at SHIMOKITAZAWA SPREAD , TOKYO, 2021)
- ゆりかご (Live at SHIMOKITAZAWA SPREAD , TOKYO, 2021)
- #15 (Live at SHIMOKITAZAWA SPREAD , TOKYO, 2021)
- Une idole (Live at SHIMOKITAZAWA SPREAD , TOKYO, 2021)
- みやしたぱーく (Live at SHIMOKITAZAWA SPREAD , TOKYO, 2021)
- ホットラテ (Live at SHIMOKITAZAWA SPREAD , TOKYO, 2021)
- For me and you (Live at SHIMOKITAZAWA SPREAD , TOKYO, 2021)
- 私的礼讃 (Live at SHIMOKITAZAWA SPREAD , TOKYO, 2021)
- パターン (Live at SHIMOKITAZAWA SPREAD , TOKYO, 2021)
第3回も、第1回・第2回に引き続き、世界的オークションハウス「サザビーズ」での経験を生かし、現在はGINZA SIX内にあるアートギャラリー「THE CLUB」のディレクターを務める山下有佳子さんにご登場いただき、現代アートの価値付けについてお話を伺いました。
連載『和田彩花のHow to become the DOORS』
アートにまつわる素朴な疑問、今更聞けないことやハウツーを、アイドル・和田彩花さんが第一線で活躍する専門家に突撃。「DOORS=アート伝道師」への第一歩を踏み出すための連載企画です。月1回更新予定。
DOORS
和田彩花
アイドル
アイドル。群馬県出身。2019年6月アンジュルム・Hello! Projectを卒業。アイドル活動と平行し大学院で美術を学ぶ。特技は美術について話すこと。好きな画家:エドゥアール・マネ/作品:菫の花束をつけたベルト・モリゾ/好きな(得意な)分野は西洋近代絵画、現代美術、仏像。趣味は美術に触れること。2023年に東京とパリでオルタナティヴ・バンド「LOLOET」を結成。音楽活動のほか、プロデュース衣料品やグッズのプリントなど、様々な活動を並行して行う。 「LOLOET」HPはこちらTwitterはこちらInstagramはこちら YouTubeはこちら 「SOEAR」YouTubeはこちら
GUESTS
山下有佳子
1988年、東京都生まれ。慶應義塾大学卒。ロンドン Sotheby’s Institute of Art にてArt Business修士課程を修了。 2011年より 2017年まで、サザビーズロンドン中国陶磁器部門でのインターンを経て、サザビーズジャパンにてコンテンポラリーアートを担当。主にオークションの出品作品集め、及び営業に関わり、ヨーロッパのオークションにおける戦後日本美術の取り扱い拡大に携わる。 2017年よりアートギャラリー 「THE CLUB」マネージングディレクターを務める。 2020年より、京都芸術大学 旧京都造形の客員教授に就任。 「THE CLUB」は2022年6月に閉廊
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