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INTERVIEW

2023.10.11

漫画に影響を受けながら、現代美術で変わりゆく都市風景をアーカイブする。 / アーティスト・GILLOCHINDOX ☆ GILLOCHINDAEが残したい風景

Interview&Text / Yoshiko Kurata
Edit / Yoshiko Kurata
Photo / Mizuki Matsuda for portrait and photos of studio
Support / 上野下スタジオ, CON_

ARToVILLAでは2023年10月27日(金)から30日(月)まで京都にて、エキシビション/アートフェア「ARToVILLA MARKET」を開催。キュレーター・山峰潤也氏による「Paradoxical Landscape」というテーマのもと、7人のアーティストの作品の展示・販売を行います。

Paradoxical Landscapeを直訳すれば、「矛盾した風景」。自然と都市、アナログとデジタル、過去と未来、現実と虚構……などの一見異なる概念が混ざり、重なり合って存在する現在的な風景のユニークさと、そんな風景への新しい感性のまなざしを探るための特集「交差する風景」にも通じます。今回は、出展作家の方々に共通の質問をし、風景と作品についてのインタビューを行いました。

出展作家のひとりである、現代美術作家のGILLOCHINDOX☆GILLOCHINDAE(ギロチンドックスギロチンディ)さん。都市と青年を題材とした物語性のある作品は、自身の個展発表に留まらず、現代美術の展覧会とライブを組み合わて7年間に渡り展開される長編プロジェクト「獸」でも表現されます。風景への想いを聞くと、小学生時代に過ごした地元の遊び場と、視覚的に影響を受けてきた漫画が交差した世界観が見えてきました。

# あなたの原風景は?
「小学生の時に見た風景、体験、記憶を忘れたくない」

東京23区の端にある僕の地元が原風景だと思います。特に、小学生の頃の記憶が一番濃厚なんですよね。いまは都市開発が進むにつれて、地元も公園や子供が遊べるような場所は少なくなっていますが、当時は多摩川沿いの自然豊かな場所で、子供だけでは入っちゃいけないと言われているような治安が悪い団地もあって。

小学生の頃って学校が終われば習い事もあって、ある種、毎日イベントがあるようなものじゃないですか。僕自身、書道や絵画教室など放課後に行くこともありましたが、なにもない日でも毎日友達と集まってどこ行くか、なにかしら遊びに出掛けていて。 そうした記憶は色濃く残っている一方で、これまで移り住んだ家は全部なくなっていて。今まで同じ市内で家を4回引越しして全ての家が取り壊されているから、良くも悪くも自分の住んだ場所が消えている感じがあります。

その後、中学生の頃の記憶は、ほとんどないのですが、高校生になってから、町田の高校と新宿の予備校に通うようになって、地元とのコントラストで小学生当時の記憶が濃くなってきてますね。町田や新宿は、高層ビルが並び、首都高が走る大都市が広がっていて、地元とは真逆の風景でした。 その頃から、小学生の時に見た風景、体験、記憶を忘れたくないという気持ちが強くなってきているような気がします。

 

# 風景とはどのようなもの?
「都市らしい無機質な風景に惹かれます」

お気に入りの東京近郊にある高層建造物

自分の居心地が良いと感じる「風景」として、何もないところに高層ビルや給水塔など巨大な建造物がたっているイメージを思い浮かびました。

地元の風景とは真逆で、いわゆる都市らしい高層ビルが立ち並ぶ無機質な風景に惹かれることが多くて。物質としても、コンクリートの塊や金属の柵などが街に転がってたら、ついつい見てしまいます。

先ほど話した小学生から高校にかけての記憶が影響してるのか、地元、町田と新宿間の移動手段として乗っていた電車から見える景色や、人々が通勤している光景も好きです。

「EYE*2」
税込価格:198,000円

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# どんな作品の考え方・アプローチをしている?
「都市に生きる青年を題材に作品展示とプロジェクト両方を発表していきたい」

「BEAST-00」(2023, sumi/acrylic/acrylicprint/washi) Photo : Ryo Yoshiya

都市と青年を題材にした物語的な作品を発表しています。
今回ARToVILLA MARKETでも出展する作品含めて、基本的に平面作品は日本画専攻だったこともあり、和紙にシルクスクリーンやミクストメディアを用いて制作しています。

作品発表以外にも定期的に「獸」というプロジェクトを実施していて。2021年に開催した第0章を始まりに第6章まで7年間にわたって、展覧会とライブイベントを合わせたプロジェクトとして今後継続的に行っていきます。「獸(第0章 / 交叉時点)」では、物語の主人公である黒い獣が東京のオフィス街で狩人に狙撃されるシーンを、僕含む3名の作家それぞれの視点からインスタレーション形式で表現しました。僕は、そのシーンから高速道路網や鉄道網を想像して鉄パイプを組んだ形で平面作品を発表しました。

今年の6月に開催したばかりの個展「☆☆☆☆☆☆☆」では、「獸」の物語に登場する人物にフォーカスを当てたのですが、今回のARToVILLA MARKETでは主人公が生きる街の風景を描きたいなと思っています。

「JYU①②⓪」
税込価格:198,000円

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# 影響を受けたアート / カルチャー
「視覚的に影響を受けたのは、漫画です」

漫画から視覚的快楽を受けてきました。
大友克洋や松本大洋など90年代の漫画をはじめに、学生時代から今に至るまで現行で流行っている漫画も好きです。高校生まで漫画は読み物ではなくキャラクターの名前もストーリーも覚えていないし、伏線も気にしないくらい、絵に夢中でした。むしろ絵がいいか悪いかだけで漫画の良し悪しを決めていたくらい。大人になるにつれて何度も読み返す中で、中身の良さもわかってきて、松本大洋が描くストーリーは好きです。

漫画以外にも、中学生の頃に流行っていた、山田悠介著書の「リアル鬼ごっこ」をはじめとしたデスゲーム系の世界観にも刺激を受けていますね。90年代の鬱々とした世界観から、00年代以降にかけて「東京喰種」も「亜人」など欠如しているキャラクターが出てき始めていて。どれも大体東京や都市が舞台になっているのですが、その裏側で起きている闇を映している美学に影響を受けています。

 

# 今後、描いていきたい風景
「時代をアーカイブするために風景を描いていきたい」

最近発表している作品では人物を主に描いていますが、今後は背景もより描いていきたいと思っています。

映画や漫画における風景って、時代をアーカイブする重要な役割なんじゃないかと思っていて。僕自身も「獸」をプロジェクト単位で展覧会と音楽、イベントを合わせて立体的に見せているのは、いま自分が生きてる時代をアーカイブするためなんです。

今年9月にリリースしたばかりのコンピレーションアルバム「JYU-Orange」は、昨年9月に開催した「獸(第1章/宝町団地)」に関連した内容になっていて。これも原風景として話した、小学生の頃の遊び場である公園や団地などをリファレンスに作っていきました。

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ARToVILLA MARKET Vol.2出展作家 藤田紗衣さんの記事はこちら!

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印刷を介した表現によって、見えていなかったものが見えたりする。 / 美術作家・藤田紗衣が描く新鮮な風景

  • #藤田紗衣 #特集

 

# ARToVILLA MARKET来場者へ
「大都市で起きる青年たちの物語を想像していただけたら嬉しいです」

今回発表する新作は、これまで発表してきたシリーズから続き、主人公を黒い獣とした物語を描きます。京都での展示は、2021年に滞在制作・発表した「AIR2 SCG」(BnA Alter Museum)以来となります。

もしこれまでの作品をご覧いただいたことがあったら、過去作品の延長線として風景を想像していただけたら嬉しいです。初めて見ていただく方も、僕が作品の主題としている都市で起きる青年たちの物語を想像してください。

また、ARToVILLA MARKETと同時期に京都で開催している「Art Collaboration Kyoto」にも、ギャラリーCON_から出展しているので合わせてご覧いただきたいです。

Information

「ARToVILLA MARKET Vol.2」
展示テーマ:Paradoxical Landscape

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展示アーティスト:浦川大志、河野​​未彩、GILLOCHINDOX ☆ GILLOCHINDAE、藤倉麻子、藤田クレア、藤田紗衣、Meta Flower

展示場所:FabCafe Kyoto 1F・2F (京都市下京区本塩竈町554)
展示期間:2023年10月27日(金)- 30日(月)
開催時間:11:00–19:00(最終日は17:00まで)
入場料:無料
企画監修:山峰潤也
制作:株式会社NYAW
制作進行:株式会社ロフトワーク

詳しくはこちら

ARTIST

GILLOCHINDOX ☆ GILLOCHINDAE

アーティスト

1999年東京都に生まれ、漫画、映画などのサブカルチャーに触れ育つ。都市と青年を題材にコンセプチュアルで物語的な表現を行なっている。現代美術の展覧会とライブを組み合わせて、7年間にわたり物語が展開されていく長編プロジェクト「獸」を開催している。また、日本橋馬喰町にあるギャラリー「CON_」のキュレーションなども行う。 主な展覧会に、個展「☆☆☆☆☆☆☆」CON_(Tokyo、2023)、「Young Artist Exhibition 2021」EUKARYOTE(Tokyo、2021)、「獸(第1章/宝町団地)」CONTRAST(Tokyo、2022)など。

volume 07

交差する風景

わたしたちは、今どんな風景を見ているでしょうか?
部屋のなか、近所の道、インターネット、映画やゲーム、旅先の風景……。
風景、とひとことでと言っても
わたしたちが見ている風景は、一人ひとり異なります。
そしてその風景には、自然と都市、アナログとデジタル、
過去と未来、現実と虚構……などの
一見異なる概念が混ざり、重なり合って存在しています。

この特集では、さまざまな人たちの視点を借りて、
わたしたちが見ている「風景」には
どんな多様さが含まれているのかを紐解いていきます。

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