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INTERVIEW

2022.12.09

アートはレコードを収集する感じと似ているかもしれない / 鷲尾友公がアートを観たら、そのつぎは?

Text / Fumika Ogura
Photo / Atsushi Matsunaga

アートを観た。作品に心を奪われた。じゃあ、その次は......どうしよう。 なかなか一歩踏み出せないかもしれないけど、勇気をふり絞ってギャラリーにいるアーティストに声をかけても良い。その絵が自分にとって掛け替えのないものだと感じるのであれば、購入し共に暮らしてみるのも良いかも。

そんな悩める人たちへ、アートをコレクションする先輩たちからのアドバイスを求めた。アートを好きになったきっかけは? どんなアートを購入した? 誰がおすすめ? なぜ買うの? どこに飾る? どうやって飾ってる?

第五回目に登場するのは美術家、グラフィックデザイナーとして制作活動を行う鷲尾友公さん。作品に出会うタイミングを大切にしているという鷲尾さんに、5W1Hの質問を投げかけた。

WHEN
アートを好きになったきっかけは?

意識するようになったのは、出展した愛知トリエンナーレ

あいちトリエンナーレ2019の鷲尾さんの作品の展示風景《MISSING PIECE》2019 / Photo: Ito Tetsuo

アートを意識するようになったのはわりと最近かもしれません。2019年に愛知トリエンナーレに参加させていただいたのですが、ほかの参加作家さんたちと出展した作品について話しをするなど、密接にお付き合いさせていただく時間があり、アートの本質的な部分に触れ、体感することができました。幼い頃からアートに触れる機会はありましたが、ここでの経験が自身の作家としての軸を作ってくれたような気がしています。ちなみに、はじめてアートを購入したのは、高校生の頃。当時、教育実習に来ていた先生に画集を見せてもらったことがきっかけで好きになった、エゴンシーレのポスターです。印刷したもので数千円のものではありますが、それが初めてのアート体験かもしれません。

 

WHAT
どんなアートを購入している?

作品との出会いはいつもタイミング

アトリエの入口に飾ってあるのは1970年のPARCOのポスター、手掛けたのは粟津潔

こちらも粟津潔の作品。鷲尾さんがファンになり粟津家族との交流も深まり、作品(ポスター)や道具を頂いたりの関係性を築いているそう。

ポスターを買うことが多いです。10点〜20点ほど所有しています。例えば、2000年前後に東京の「デプト」で購入したアメリカのシェパード・フェアリーのポスターや、フランク・コジックなど、グラフィティーアーティストのものが多いですね。オランダのアーティスト、パイエット・パラのシルクスクリーン作品は5点くらい持っているかも。最近だと、クレオン・ピーターソンのものを購入しました。オンラインでたまに販売をしていて、すぐ売り切れちゃうときもあるんですが、タイミングよく買えたのでラッキーでした。

SNS経由で購入したというクレオン・ピーターソンの作品。写真左《Into the night》2021 / 写真右《Flowers Of Evil The Kiss (Bone)》2021

「ポスターは買いすぎてどこにしまったか忘れてしまうんですよね……」と楽しそうに探す鷲尾さん。

A fool

 

WHO
誰の作品がおすすめ?

食パンをモチーフにしているところが気に入りました

《A fool》2019

最近購入を考えているのが、小川愛さんの作品です。友人であり作家の蓮沼昌宏さんに小川さんの絵を紹介してもらい存在を知りました。2021年に蓮沼さんと二人で展覧会を行った際にスタッフとして働いていたのが小川さんで、その時に初めてお話ししました。食パンを題材にした油絵を描かれているのですが、その発想がおもしろいと思いました。パンってアイコニックでキャッチーなものなのにも関わらず、自身のフィルターを通して、美術として表現をされているところが魅力だなと思います。新しい作家さんの情報は、友達の紹介や、学芸員さん、キュレーターさんから教えてもらうことが多いです。

小川愛さんの作品はこちらから

 

WHY
なぜアートを購入するのか?

この年齢になってやってきた青春時代

遅れてやってきた青春かもしれないですね。20〜30代のころは、続けていくために精一杯でした。ようやくいまの年齢になって少しだけ余裕が出てきて、若かった当時は手にできなかったものを集めている感じかもしれないですね。音楽を聴くのも好きなのですが、レコードやオーディオを収集する感じと少し似ているかもしれません。

 

WHERE
どこに絵を飾っている?

鷲尾さんのアトリエの壁には粟津潔の作品や映画のポスター、自身が手がけたイベントのフライヤーなどがずらりと並ぶ。

ほとんどアトリエに飾っています。一般のお客さんが入ってくる場所は、定期的に作品を入れ替えていますが、配置などにこだわりはなくて、隙間を埋めていく感じで飾っていますね。けど、購入して届いてから、10年以上開けていないポスターもあって、まだ梱包された筒のままの状態で置いてあるものもあります(笑)。アトリエ以外だと、自宅にもいくつかありますね。以前、作家の蓮沼昌宏さんと二人で展覧会をしたときに、お互いの作品を物々交換したんですが、蓮沼さんが描いたハトの絵を部屋に飾っています。アトリエの近くに新しいスタジオギャラリーをつくり始めたので、完成したらそのスペースにも絵を飾りたいです。いろんな方が観にきてくれると嬉しいですね。

《鳩とのフィールドワーク》2018 蓮沼昌宏

 

HOW
どうやって絵を飾る?

《The Passions》クレオン・ピーターソン 2009

もう20年くらいお願いしている額装屋さんがあって、作品を購入するたびに持っていきます。付き合いが長く、私の好みも分かってくれているので、出来上がりがいつもいい感じなんですよね。

アトリエにある秘密の小部屋にて

information

ARToVILLA DOORS CHOICE
※全作品web抽選販売となります。

■会場1
FabCafe Nagoya
〒460-0002
愛知県名古屋市中区丸の内三丁目6番18号先 RAYARD Hisaya-Odori Park内
名古屋市営地下鉄 久屋大通駅 1A出口 徒歩3分
Google map
会期:2022年12月15日(木)〜12月20日(火)
※最終日は19時まで
詳しくはこちら

■会場2
松坂屋名古屋店 南館8階 マツザカヤホール
〒460-0008
愛知県名古屋市中区栄3丁目16−1
地下鉄名城線矢場町駅 地下通路直結(5・6番出口) / 地下鉄栄駅 16番出口より南へ徒歩5分
Google map
会期:2022年12月15日(木)〜12月20日(火)
※最終日は16時閉場
詳しくはこちら


■入場料
無料

DOORS

鷲尾友公

美術家、グラフィックデザイナー

愛知県生まれ。同地在住。独学で絵画を学び、人物や事象など享受した事柄と関わり合いながら、イラストやデザイン、映像など多岐に渡る制作活動を展開し、人間の自由な行為として表現する。美術館や海外でも発表されたオリジナルモチーフの手君は運気アップの一つ。主な展覧会に「鷲尾知公のWILD THINGS(アートラボあいち長者町, 2016年)、「粟津潔、マクリヒロゲル1『美術が野を走る:粟津潔とパフォーマンス』」(金沢21世紀美術館, 2014年)「あいちトリエンナーレ2019 情の時代」などがある。

volume 04

アートを観たら、そのつぎは

アートを観るのが好き。
気になる作家がいる。
画集を眺めていると心が落ち着く。

どうしてアートが好きですか?
どんなふうに楽しんでいますか?

観る、きく、触れる、感じる、考える。
紹介する、つくる、買う、一緒に暮らす。

アートの楽しみ方は、人の数だけ豊かに存在しています。
だからこそ、アートが好きな一人ひとりに
「アートとの出会い」や「どんなふうに楽しんでいるのか」を
あらためて聞いてみたいと思います。

誰かにとってのアートの楽しみ方が、他の誰かに手渡される。
アートを楽しむための選択肢が、もっと広く、深く、身近になる。

そんなことを願いながら、アートを観るのが好きなあなたと一緒に
その先の楽しみ方を見つけるための特集です。

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