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ESSAY

2022.01.21

部屋から飛び出して、本当に“大きいもの”を見に行こう! / 柴田聡子(ミュージシャン)

Text / Satoko Shibata
Edit / Eisuke Onda

特集「部屋から、遠くへ」ではアートを愛する方々に“遠く”を感じる作品についてのエッセイを綴ります。ミュージシャンの柴田聡子さんが紹介するのは彫刻家のイサム・ノグチが設計した北海道・札幌市にある「モエレ沼公園」。窮屈な部屋から飛び出して、大自然に囲まれた巨大オブジェと対峙したとき、その存在が語りかけてくるものとは? とても大きな作品を観たことが、「日々の生活の支えになる」と回想する。

写真提供:モエレ沼公園

モエレ沼公園

彫刻家のイサム・ノグチが公園全体を彫刻作品として捉えて設計した公園。2005年に北海道札幌市の市街地にグランドオープン。広大な敷地には幾何学形態を多用した山や噴水、遊具などの施設が整然と配置されており、自然とアートが融合した美しい景観を楽しむことができる。写真は高さ13mもあるオブジェの「テトラマウンド」。

果てしなく遠い存在

私はたいてい部屋に居る。部屋の中では、目に見えない遠くのものをとても近くに感じる。つい「よく見える」と思い、ひいては「よく分かる」とまで思い込む。危ない危ない。そうなってきたら、大きいものを見に行こう。目の幅じゃ足りないくらい大きなもの。

札幌にあるモエレ沼公園。どでかい水溜りのようなプール。ものすごい音と共に数メートルまで噴き上がる水。歩いても歩いても雪原。見上げる、めまいのしそうなくらい巨大な三角錐。あそこは人の作った大きなものの集合体。宇宙や地球と比べると、そんなに大きくないのかもしれない。でも、いざその物体対自分だけになってみると、確実に大きい。目の前に捉えているのに、果てしなく遠いと感じる。人が作ってここに置いたら、誰かの中にそんな気持ちが生まれた。ただ、大きいこと以外、何も分からない。生まれているのに何も分からないなんて! この経験が部屋の中のあれこれを支えている。曲を書いたり、文字を書いたり。

DOORS

柴田聡子

ミュージシャン

北海道出身のシンガーソングライター。大学生の頃からギターの弾き語りを始める。最新作『がんばれ!メロディー』まで、5枚のオリジナルアルバムをリリース。音楽以外にも2016年に発表した初の詩集『さばーく』で現代詩の新人賞を受賞、雑誌『文學界』でコラムの連載執筆、雑誌『ことばと』で小説「新曲・Best Friend」を発表するなど幅広く活動中。

volume 01

部屋から、遠くへ

コロナ禍で引きこもらざるを得なかったこの2年間。半径5mの暮らしを慈しむ大切さも知ることができたけど、ようやく少しずつモードが変わってきた今だからこそ、顔を上げてまた広い外の世界に目を向けてみることも思い出してみよう。
ARToVILLA創刊号となる最初のテーマは「部屋から、遠くへ」。ここではないどこかへと、時空を超えて思考を連れて行ってくれる――アートにはそういう力もあると信じています。
2022年、ARToVILLAに触れてくださる皆さんが遠くへ飛躍する一年になることを願って。

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