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2023.12.15

アーティスト 角谷紀章 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.24

Photo /Gyo Terauchi

独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動する、とに〜さんが、作家のアイデンティティに15問の質問で迫るシリーズ。今回は、作品を通して他者に想像させることをコンセプトに制作しているアーティスト、角谷紀章さんの背景に迫ります。

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アーティスト 小池正典 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.23 はこちら!

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アーティスト 小池正典 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.23

  • #アートテラー・とに〜 #連載

今回の作家:角谷紀章

作品を通して他者に想像させることをコンセプトに制作している角谷紀章。
すりガラス越しの景色からイメージした「Frosted Window」、カーテン越しの景色からイメージした「Curtain」シリーズといった、鑑賞者の視知覚を妨げるノイズを配置し、ノイズ越しの景色を想像させることで絵画世界に没入感を促すような作品を制作している。

1993年 兵庫県神戸市生まれ。
2022年 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻日本画修了 博士号(美術)取得。
2023年 個展「媒介であり防護壁」/銀座蔦屋書店・四季彩舎

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Curtain#22
803×1303mm (M60号) 2023年作
綿キャンバスにアクリル絵の具

 

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角谷紀章さんに質問です。(とに〜)

画面の一部がすりガラスのようなもので隠されていたり。
あるいは、画面の両サイドがベールのようなカーテンで覆われていたり。
どこにでもある日常の光景が、角谷さんの手にかかれば、どこにもない幻想的な光景に生まれ変わります。
見えそうで見えない画面のその先はどうなっているのか。気づけば、ずっとそればかりを考えている自分がいます。残念ながら、いまだ答えには辿り着けていないですが、彼が絵を通して伝えたいであろうその答えはきっと奥の方、画面のずっと奥の方にあることだけはわかりました。
さて、絵画の画面以上に見えそうで見えないのが、角谷さんご自身。15の質問で少しでもベールを明らかにできればと思います。

 

「Frosted Window #53」
税込価格:121,000円

「Frosted Window #53」
税込価格:121,000円

Frosted Window #53

Q01. 作家を目指したきっかけは?
幼少期から絵画教室に通っていたので、絵を描くことや工作は好きでした。高校で進路を決める時に、自分が1番好きなこと、向いていると思うことを考えた時に美術の道に進もうと思いました。

Q02. モチーフとなる風景はどのように選んでいますか?
日課として自分のスマートフォンで撮影する写真の中から、選んでいます。
まず撮影は描くことを目的としているわけではなく、日々の記録として、ほぼ毎日のように撮り溜めたものです。それらを見返した時に、何を撮ったのか、なぜ撮ったのか、その時の心情や状況が思い出せないような距離感のイメージから作品に起こしていきます。

Q03. ぼけている部分はすべての風景を描いたあと、その上から描いているのですか?
ぼけている部分を先に描き、滲みによってうまれる表情に合わせて詳細な景色を描いています。

Q04. ぼけている部分を描く上での一番のこだわりを教えてください。
ぼけている部分は、水によって絵の具を滲ませて描いています。モチーフとなる写真を基にして描いていきますが、滲みよって生まれる予期せぬ表情も含めて偶然性を大事にしています。

Q05. 反対に、ぼけていない部分を描く上での一番のこだわりを教えてください。
写真の景色を再現するわけではなく、ぼけた部分に繋がるように描いていきます。ぼけたところにあるものは、私の中でも決まっているわけではないので、ぼけた表情の中に何があるのか想像しながら繋げていきます。

Q06. 現在はアクリル絵具で描かれてますが、もとは日本画を学んでいたと伺いました。日本画の画材からアクリル絵具に変わったのには理由がありますか?
「Frosted Window」も「Curtain」も初期作品は日本画の材料で描いてました。制作を続ける中で、もっとぼけた部分と詳細に描く部分のコントラストをつけたいと思い、表現に向いたアクリル絵の具を使い始めました。
ここ1年半くらいはアクリル絵の具で描いていますが、最近作り始めた違うシリーズでは、また岩絵具と膠を使ったりしています。

「Frosted Window #68」
税込価格:121,000円

「Frosted Window #68」
税込価格:121,000円

Frosted Window #68

Q07. 画材は変わっても、現在のご自身の作品に、日本画で学んだことは活きていると感じますか?
表現として日本画に分類される点はほぼないと考えていますが、ベースとなる部分はほぼ日本画を専攻して学んだことが活きていると感じます。また、私の作品の根底には、私自身の日本人的な感覚や日本人の文化性が反映されていると考えています。

Q08. 今年の漢字一字は何ですか?(理由も含めて)
「痩」
5kg痩せた

Q09. アトリエの一番のこだわり or 自慢の作業道具など
大学の研究室を制作場所にしているため、自分仕様にしたり、特別こだわりがあるわけではありません。自分が制作をする上で大切だと思うことは場所の広さです。

Q10. 世の中にある見えそうで見えないものの中で、もし、見れるのであれば見たいものを教えてください。
カロリー

Q11. 世は忘年会シーズンです。絶対に何かかくし芸をしなければならないとなったら、何をしますか?
とにかく明るい安村

Q12. 職業病だなぁと思うことは?
自分にとって絵を描いたり、絵を考えたりすることが生活の一部であり、すごく自然なことなので、正直思いつきません。

Q13. 青春時代、一番影響を受けたものは何ですか?
学生時代などは極めて普通だったと思います。青春時代に限らず、テレビっ子だったので、テレビを見る時間は長かったように思います。
高校生の時に部活でラグビーをしていたことがあり、1年くらいでやめてしまったのですが、メンタル面で影響を受けました。

Q14. もしも、鬼退治に行く時にイヌ・サル・キジ以外にもう一種お供を加えていいと言われたら、どの動物を連れていきますか?

Q15. もしも作家になってなかったら、今何になっていたと思いますか?
普通のサラリーマン。
どういう業種かはわかりませんが、向いていなくはないように思います。

はじめにぼけている部分ありき。
そこから角谷さんの作品世界が広がっているのですね。
クリアな部分に対して、ぼけている部分があるのかと思いきや。ぼけている部分に対して、クリアな部分がある。そう知った上で観てみると、これまでの見え方がガラッと変わりました。まるでルビンの壺のだまし絵のように、「地」と「図」が反転したような。角谷さんの作品世界を観る視界がクリアになった気がします。
そうそう、これまでスマホの写真を見返している際に、ぼけた写真があると即消去していましたが。角谷さんの世界に触れたことで、これからは、ぼけた表情の中に何があるのか想像することになりそうです。

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Information
今後の展示スケジュール一覧

個展「白い夜」

■会期
2023年12月12日(火)〜 2023年12月24日(日)

■会場
コートヤードHIROO ガロウ 
〒106-0031東京都港区⻄麻布 4-21-2

■休廊日
月曜日、12月22日(金)

 

SIGNS OF A NEW CULTURE vol.18

■会期
2024年1月10日(水)〜1月16日(火)
10時~20時

■会場
大丸札幌店1階 イベントスペース
〒060-0005 北海道札幌市中央区北5条西4丁目7

■入場
無料

ARTIST

角谷紀章

アーティスト

1993年 兵庫県神戸市生まれ。 2022年 東京藝術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻日本画修了 博士号(美術)取得。 2023年 個展「媒介であり防護壁」/銀座蔦屋書店・四季彩舎

DOORS

アートテラー・とに~

アートテラー

1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。 芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。 美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。 アートブログ https://ameblo.jp/artony/ 《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『こども国宝びっくりずかん』(小学館) 

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