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2026.08.26

アーティストOKI KENICHI 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.47

Photo / Kaoru Mochida
Edit / Eisuke Onda

独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動する、とに〜さんが、作家のアイデンティティに15の質問で迫るシリーズ。今回は人物を変形させた抽象画などを制作するアーティスト・OKI KENICHIさんのアトリエを訪ね、その作品や創作の背景についてうかがった。

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アーティスト 菊池玲生 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.46 はこちら!

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アーティスト菊池玲生 編 / 連載「作家のアイデンティティ」Vol.46

  • #アートテラー・とに〜 #連載

今回の作家:OKI KENICHI

人物を変形させることで思考を表現した抽象画、アルファベットを独自の形に変形させた文字作品、またはその2つを掛け合わせた作品をベースに、立体作品やインスタレーション作品なども発表している。2014年にはニューヨークへ渡り、Bushwick Open Studiosの参加アーティストに選出され、その後、国内のみならず海外での活動も続けている。また、アパレルブランドやミュージシャンとのコラボレーションアイテムのデザインも多数手掛ける。

002-artist-identity-47《角のない世界》 Spray paint, oil ink, acrylic on canvas / 910×727 mm / 2026

003-artist-identity-47《Dance》Spray paint, oil ink, acrylic on canvas / 455 × 380 mm / 2026

004-artist-identity-47
《Everyday Waltz》Spray paint, oil ink, acrylic on canvas / 455 × 380 mm / 2026

 

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OKI KENICHIさんに質問です。(とに〜)

日本とアジアのギャラリーやアーティストをつなぐ、西日本最大級のアートフェア。それが、ART FAIR ASIA FUKUOKA。11回目となる今年は、ARToVILLAも参加するそうです。 その予習として、今回は出展作家の1人であるOKI KENICHIさんを深掘りいたします! パッと見、サラサラッと描かれているように思えますが、色遣いや取り合わせ、構図などすべてにおいてセンスが光るOKIさん。きっとその制作の裏側にはいろいろなこだわりがあることでしょう。 今年6月に、アーティスト活動15周年を記念した個展『3/15(15分の3)』が開催されたそうですが、質問には『15/15』すべてお答えいただけますと幸いです。


Q01. 作家を目指したきっかけは?

小さい頃から絵を描くことが大好きでしたね。初めは漫画の模写から入って、オリジナルストーリーの漫画を描くようになり、大人になってくにつれて作品を描くようになりました。そんなに絵が上手いわけではなかったし、美術の授業もテーマや描くものを決められるから嫌いで真面目に受けてませんでした。
だから、アーティストになれるとは微塵も思ってなくて、趣味として描いていました。特にやりたいこともなかったので、普通に会社員として働いてましたが、ある日、僕が通ってたアパレルのセレクトショップの店長が「ウチで売ってみませんか?」と言って下さったことがきっかけです。アーティストになれるなんて思ってなかった僕にとっては人生が大きく変わった一言でした。

幼少期は『ドラゴンボール』などの漫画を模写し、やがてオリジナルの漫画も描くように。高校時代にはバンド活動を始め、架空のCDジャケットを描いたことから絵の具や抽象表現に興味を持った。「高校を卒業した頃からキャンバスを買って、絵を描くようになりました。当時は画材を買ってきて、どう使ったら面白いんだろうって、いろいろ試すこと自体が楽しかったですね」とOKIさん。その後、セレクトショップで作品を販売したことをきっかけに、アーティストへの道が開けた。「最初に2枚納品したら、1週間くらいで両方売れて。まず、自分が描いた絵が売れるんだ、ということに驚きました。その後、店内で個展を開くことになったので、会社を辞めてアーティストに専念しました。当時は30歳でしたね」

Q02. もしも作家になってなかったら、今何になっていたと思いますか?

絵以外にやりたいこともないので、そのまま会社員だったと思います。


Q03. 青春時代、一番影響を受けたものは何ですか?

ストリートカルチャーだと思います。多感な時期、ストリートカルチャー真っ只中だったこともありますが、周りにカッコいい先輩もいて、いろんな事を教えてもらえたことが大きいです。

「青春時代はファッションと音楽を中心に、ストリートカルチャーから影響を受けました。福岡でお店をやっている先輩からいろいろ教えてもらって、そのつながりでFUTURA本人に会わせてもらったこともあります。当時はもう、単純に『かっこいい』としか思ってなかったですけど(笑)」


Q04. “人物を変形させることで思考を表現した抽象画”を描くようになった経緯を教えてください。

ピカソの作品を中学の美術の教科書で見た時に"見たままに描く必要がないんだ。"と衝撃を受けたことを覚えてます。

そして、趣味で絵を描き続ける中で思考を抽象的に表現したいという気持ちになったタイミングがありました。そこからは単純で人の思考を表現するのに最も適してるのは人かなぁ?と考えたんです。

「昔は画材屋に行って気になるものを買ってきて、『これをどう使ったら面白いんだろう』って実験することが、絵を描くことの中心にありました。絵の具やスプレーも、まずはいろいろ試して、自分にフィットするものを探していく。描きたいものが先にあるというより、画材を使ってみて、そこからどんな表現ができるかを考えることが多いですね」

Q05. “人物を変形させることで思考を表現した抽象画”を描いていらっしゃいますね。人物には特定のモデルはいますか?表現する思考は作品によって違いますか?

特定のモデルはいません。似たような思考を表現した作品もありますが、基本的には全て違います。一貫してるのは前向きなテーマの作品であることです。これはずっと変わってません。

Q06. “アルファベットを独自の形に変形させた文字作品”も描いていらっしゃいますね。変形させる際のポイントはありますか?

右下に落ちていくような直線でエッジを効かせることです。

Q07. 好きなアルファベット1文字を教えてください。

小文字の"e"ですね。僕が描く変形させたアルファベットの中で一番好きだからです。

「もともと自分の字があまり好きじゃなくて。でも、抽象画を描いているなら、文字だって教わった形である必要はないんじゃないかって。そこからAからZまで、自分だったらどんな形がかっこいいと思うかを考えて、オリジナルのアルファベットを作りました」

Q08. 近年はスプレーを使った作品が多いようです。画材としてのスプレーの魅力は何ですか?

僕は缶のスプレーを使っています。お客様のお洋服に直接スプレーでペイントする"あなたのお洋服プシュッと変化"という僕が行ってるイベントを通して、上達はしたのですが、どうしてもコントロールが効かない部分があるところが魅力です。
僕はきっちり丁寧な絵を描くタイプなので、その中にコントロールが効かないものが混ざるのが絶妙に好きなんです。

「スプレーはどうしてもコントロールが効かない部分があって、そこが面白いんです。日本で手に入るものはたぶん全部一度試して、その中で一番、自分の手に馴染む線が出たのがドイツ製のスプレー。今はそれを使っています」

人物や文字とともに、花をモチーフにした作品も描き続けるOKIさん。この作品は、以前「作家のアイデンティティ」に登場したkurryさんとの共作。「花を描き始めたきっかけは、エレファントカシマシの『Easy Go』を聴いたことでした。僕も愛や喜びみたいなものを花として届けられたらいいなと思って、『自分が花を描くならどんな花だろう』と考えたのが始まりです。小さな花の作品はもう300枚以上描いていて、今では人物や文字と並ぶ、自分にとって大事なモチーフですね」


Q09. アトリエの一番のこだわり or 自慢の作業道具など

こだわりとまでは言えませんが、好きな物に囲まれていたいっていうのがあるので、好きな物を置くようにしてます。作業道具に関しては、自慢とは違いますが、最近使い始めたのはシルクスクリーンのスキージーです。

アーティストになる前は画材屋に画材を買いに行っては、どう使うと面白いかなぁ?と実験して遊んでましたが、アーティストになってからは表現方法が定まり、実験する機会も減ってしまっていました。

2025年、失明しかけたことをきっかけに原点に立ち返り、アトリエにある、絵を描くためではない道具を見直し、実験した時にビビッときた道具です。

作品や画材、ぬいぐるみやキャラクターアイテムなど、好きなものに囲まれた制作机。「特にこだわって配置しているわけではなくて、本当に好きなものを自分の感覚だけで置いています」

最近の制作で使い始めた、シルクスクリーン用のスキージー。「去年、もう一度いろいろな道具を試してみようと思ったときに使い始めました。絵の具をキャンバスに直接落として、これで引いていく。力加減やエッジの立て方で線が変わるので、そこからどんな表現ができるかを考えています」

Q10. 制作中によく視聴しているものは何ですか?

音楽だとTune-YardsやIbibio Sound Machineを聴くことが多くて、最近だとAili & Orsonを聴いてます。

PodcastだとPERHAPSというギャラリーのオーナーと友人のデザイナーの2人でふわふわおしゃべりしてる「たぶんほんとのはなし」を聴いてます。

「制作中は音楽を聴くことが多いですね。ピンポン玉が跳ねるような、リズミカルな音が好きで聴いていると心地よく制作できるんです。普段はクラシック以外なら、ジャンルを問わずいろいろ聴きます」

Q11. Instagramを拝見したところ、何度も同じポーズを取っていますよね。何のポーズですか?

写真を撮られるのが苦手で始めたポーズです。カメラの前で笑顔も苦手ですし、手とかもどうしていいかわからなかったりするので。

ある時、ふざけてカメラの前で取ったポーズが定着しただけなので深い意味はありません。

Q12. 『ドラゴンボール』に魅了されたのがきっかけで絵を描き始めたそうですね。そんなOKIさんの『ドラゴンボール』のベストシーンは何ですか?

多分アニメ版だけの表現だったと思うのですが、ベジータがフリーザに踏み付けられて、ベジータが泣くシーンです。

あんなにプライドが高いベジータが、、、と涙しました。

Q13. 職業病だなぁと思うことは?

見たものを頭の中で絵にしようとすることです。生活していて林檎を見たとしたら、林檎をテーマに頭の中で絵を描き始めることがあるんです。これには弊害があって、見た目は作業してない状態なのに頭はフル回転してるので、周りの人が当然聞いてるだろうと思っても話を聞いてないことが多々あるんです。無意識に返事までしちゃってて。よくマネージャーを困らせてます。反省はしてます。

Q14. もともとは福岡県を拠点に活動されていたと伺いました。地元民ならではの福岡のおすすめスポットを教えてください。

NEU! ALBUMです。お酒も食事も美味しくて大好きなお店です。音楽とアートが好きな方々なので壁に色んな作家さんのアートが飾ってあるのが個人的には落ち着くポイントです。僕のオススメはフライドポテトです。世界一だと思っています。

キャラクターグッズに混じって、地元・福岡のアーティストのステッカーなどもちらほら。3年前に東京へ拠点を移したOKIさんだが、「引っ越してきて一番衝撃だったのは、納豆のタレの味が違うこと(笑)。福岡のものは甘いんですけど、こっちはちょっとしょっぱくて。納豆は毎日のように食べるので、今は福岡からタレを取り寄せています」

Q15. ART FAIR ASIA FUKUOKA 2026に参加される意気込みを教えてください。

福岡は地元ですが作品を観ていただくのは2年ぶりというのもありますし、普段とは違う方々にも観ていただける良い機会だと感じているので、現時点の僕が描ける最高の作品を準備していこうと思います。

難しいことは抜きにして、眺めているだけでなんか楽しい気分になる。思わず“ワクワクすっぞ!”と声に出してしまいそうになるOKIさんの作品。
その秘密は、OKIさん自身が誰よりも楽しんで制作していることにあったのですね。職人タイプのアーティストであれば、画材は完璧に制御できるものだけを選ぶはず。そこをあえてコントロールが効かないスプレーをチョイスするあたりに、OKIさんの本質を見た気がします。
新しいおもちゃ(?)であるシルクスクリーン用のスキージーで制作した作品は、ART FAIR ASIA FUKUOKA 2026に出品されるのでしょうか?今から福岡に行くのが楽しみです(NEU! ALBUMのフライドポテトも併せて)。
ART FAIR ASIA FUKUOKA 2026でOKI KENICHI先生の作品が観れるのはARToVILLAブースだけ!(とに〜)

Information

「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2026」

■会期
10月2日(金) 11:00 - 19:00
10月3日(土) 11:00 - 19:00
10月4日(日) 11:00 - 18:00

※10月1日(木)は、プレス・関係者向けのプレビューを実施します

■会場
福岡国際センター
(福岡県福岡市博多区築港本町2-2 )
ARToVILLA出展ブース:C04

■入場料
早割券: 2,500円(税込) ※受付期間は9月9日(水) 23:59まで
前売券: 2,500円(税込) ※受付期間は9月10日(木)~10月1日(木) 23:59まで
当日券: 3,000円(税込)
※いずれも3日間通し券

「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2026」公式サイトはこちら

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ARTIST

OKI KENICHI

アーティスト

人物を変形させることで思考を表現した抽象画、 アルファベットを独自の形に変形させた文字作品、 またはその2つを掛け合わせた作品をベースに、 立体作品やインスタレーション作品なども発表している。 2014年にはニューヨークへ渡り、 Bushwick Open Studios の参加アーティストに選出され、 その後、国内のみならず海外での活動も続けている。 また、アパレルブランドやミュージシャンとの コラボレーションアイテムのデザインも多数手掛ける。

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アートテラー・とに~

アートテラー

1983年生まれ。元吉本興業のお笑い芸人。 芸人活動の傍ら趣味で書き続けていたアートブログが人気となり、現在は、独自の切り口で美術の世界をわかりやすく、かつ楽しく紹介する「アートテラー」として活動。 美術館での公式トークイベントでのガイドや美術講座の講師、アートツアーの企画運営をはじめ、雑誌連載、ラジオやテレビへの出演など、幅広く活動中。 アートブログ https://ameblo.jp/artony/ 《主な著書》 『ようこそ!西洋絵画の流れがラクラク頭に入る美術館へ』(誠文堂新光社) 『名画たちのホンネ』(三笠書房) 

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