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ESSAY

2022.02.04

モノクロの中にある“本当の世界” / 前田エマ(モデル)

Text / Emma Maeda
Edit / Eisuke Onda

特集「部屋から、遠くへ」では、アートを愛する方々が“遠く”を感じる作品についてのエッセイを綴ります。モデルの前田エマさんが紹介するのは、さわひらきさんの映像作品。部屋の中を小さな飛行機が飛び交うモノクロームの映像は、見る度に感じることが違うのだとか。飛行機の軌道を見つめながら、考えたことを教えてくれました。

「dwelling」さわひらき

「dwelling」さわひらき

映像、立体、平面作品を発表するアーティストのさわひらきさんが2002年に発表したデビュー作。無数の飛行機が家の中を飛び交う様子を撮影した映像作品。2017年には作家が生まれ育った実家で、同じ手法を使った作品「/home」を発表した。

怖さを感じたり、嬉しくなったり

アートを追いかけていると、人生で何度か同じ作品を体験する機会がある。作品を目の前にするたびに初めて出会った時と似たような感覚が心を包むこともあれば、時代や場所、その時々の自身の有り様によって、全く違うものとして映ることもある。

さわさんのデビュー作「dwelling」を初めて見た時、私は自分の子どもの頃の記憶を撫でているような感じがした。家の中をたくさんの飛行機が飛び交うモノクロの映像は、楽しげだけれどザラっとした怖さも含んでいるような気がした。

昨年、奥能登芸術祭で観た「/home」は、さわさんの生まれ育った石川県にあるご実家を、ご両親が転居されるのをきっかけに撮られた作品だった。使い古された、それでいて家具などが取り払われたご実家の中を、これまたたくさんの飛行機が飛び交う。感染症の流行以来、私は初めて飛行機に乗ったのがこの旅だった。

「dwelling」を見たときは、まるで自分がドールハウスのお人形にでもなったかのような違和感を感じたが、「/home」を観たときは映像の中の世界のほうが“本当の世界”のような感じがした。部屋の中と外を自由に行き来する飛行機を見ていると、確かに私はちっぽけな人間なんだと、そのことに嬉しくなったのだった。

DOORS

前田エマ

アーティスト/モデル/文筆家

東京造形大学を卒業。オーストリア ウィーン芸術アカデミーの留学経験を持ち、在学中から、モデル、エッセイ、写真、ペインティング、ラジオパーソナリティなど幅広く活動。アート、映画、本にまつわるエッセイを雑誌やWEBで寄稿している。今年の夏に初の小説集『動物になる日』(ミシマ社)を上梓。

volume 01

部屋から、遠くへ

コロナ禍で引きこもらざるを得なかったこの2年間。半径5mの暮らしを慈しむ大切さも知ることができたけど、ようやく少しずつモードが変わってきた今だからこそ、顔を上げてまた広い外の世界に目を向けてみることも思い出してみよう。
ARToVILLA創刊号となる最初のテーマは「部屋から、遠くへ」。ここではないどこかへと、時空を超えて思考を連れて行ってくれる――アートにはそういう力もあると信じています。
2022年、ARToVILLAに触れてくださる皆さんが遠くへ飛躍する一年になることを願って。

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